暁 〜小説投稿サイト〜
すまぬ
第三章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「それは公一代の過ちです」
「だからだな」
「それがしはそれを何故されたかをです」
「吉田東洋のこと知っていよう」
 容堂は右手に持つ盃を傾け酒を飲みつつ述べた。
「誰が殺したか」
「武市殿ですか」
「そして土佐勤王党の者達がな」
「証拠はありませぬが」
「だがそれは明白」
 彼等が吉田東洋、容堂の右腕と言えた彼を暗殺したことはというのだ。
「それでだ」
「腹を切らせましたか」
「打ち首にした者もいた」
「そうですか」
「それでどうする」
 今度は容堂が桂を見据えた、酔っているがその目の光は確かなものだった。
「天下が変われば今度はわしが首を取られるか」
「そのお覚悟があると」
「何を今更」
 容堂はまた飲んだ、傍に控える小姓yが注いだ酒をそうしている。
「わしはそなた達志士に随分と嫌われている」
「だからでっちあげをしてもですか」
「そうではないか」
「それが出来ぬと言われていますが」
「今は幕府があるからな、だが天下が変われば」
 この時はというのだ。
「どうか」
「それは」
「わからぬな、だが討ちたいなら討つのだ」
 酒を飲みつつ言うのだった。
「あの者達の仇を取りたいならな」
「そうですか」
「嫌われているのはわかっておる」
 今言った通りにというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「好きにせよ」
 また言うのだった。
「それで気が済むのならな」
「罪をでっち上げてでも」
「わしがした様にな」
「証拠がなくともですな」
「そしてでっち上げてもな」
「それがしはそうしたことはしませぬが」
「ならそれでよいであろう、しかしわしにはあの者達を殺す理由があった」
 確かなそれがというのだ。
「今言った通りな」
「吉田東洋殿のことで」
「左様、ただ郷士だから特に重く考えることなくな」
「殺したのは事実ですか」
「土佐では郷士はそんなものだ」
 上士と郷士の区別が厳しい藩であることも話した。
「だからわしもな」
「気兼ねなくですか」
「殺した、それを怨むならな」
「天下が変われば」
「好きな様にせよ」
 一行にというのだった。
「今すぐでもよい」
「そうですか」
「お主がここでわしを切ってもな、今のお主がわしを切っても何でもなかろう」
 桂を見据えて言った。
「わしが切りかかったから返り討ちにしたとも言えばな」
「そうしたことはしませぬが」
「ならそれでよい、兎角わしにはあの者達を殺す理由があり」
「また彼等を軽く見ていた」
「このことで隠すことも偽ることもない」
 こう言ってまた飲んだ、ここで桂は用を足しに一旦席を立った。そして戻って来るとだった。
 容堂は酔い潰れていた、桂はその彼を見てあれだけ飲んでいれば当然のこと
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ