クリスマスイブイブストーリーB
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ので、最小限のコミュニケーションを心がける。
「やはり! あなたも武闘家なのですね。なかなかの反射神経と佇まいでした」
「……どうも」
完全に遊ばれたし、皮肉にしか聞こえなかった。
ここで、急に男の雰囲気が変わった。
「でも……今のあなたでは真の武闘家にはなれませんね」
「……は?」
「自分のポテンシャルを完全に発揮できていないのです。それでは真の武闘家とは言えません」
いきなり意味の分からない事を言う人だ。
今の発言でさらにイラッときたので、もう無視することにしよう。
「……そうですか。それでは」
そう言って逃げようとしたその時、男の次の言葉が私の足を止めた。
「今のあなたでは、誰かの力になる事はできません」
「っ!」
思わず足を止めて振り返ると、男は真剣な顔で私の事を見ていた。
「武道とは心技一体です。なのに、あなたは心が乱れたまま体を酷使している。それでは上達などしない。強くもなれない」
「……」
「質問です、あなたはどうして武道を始めたのですか?」
「……は?」
いきなりの質問に、私は答える事が出来なかった。
私が空手を始めたのは、兄さんがやっていたから。理由はただそれだけ。兄さんに追いつきたい一心でただただ背中を追いかけていたのだ。
「……」
「答えられませんか? まぁいいでしょう。重要なのは次の質問ですから」
「……次?」
「ええ、次の質問です。あなたはどうしてこの公園を走っていたのですか?」
それが大事な質問? 拍子抜けだが、その質問の答えは簡単だ。
「強くなりたいから……です」
「ほぉ。強くなりたい?」
「……はい」
私の答えを聞いて、男の顔が少し緩んだ気がした。
「では、なぜ強くなりたいのですか?」
「……力になりたい人がいるから」
「ほう?」
「一緒にいたい、そばにいて支えたい、そう思う人がいるから。その人の力になりたいんです」
……私は初対面の大人に何を話しているのだろうか。
まるで勝手に私の口が動いているかのように、スラスラと言葉が紡がれていく。
「よく分かりました。あなたが鍛錬している理由は、大切な人の力になりたいから。そういうことですね?」
「……(こくり)」
「……よろしい」
無言で頷くと、男は満足そうに笑った。
「武闘家たるもの、武道を歩む
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