妖獣の手のひら
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、奴らも見てやらければ不公平というもんだろう」
ジン・ジャハナムの暗号指令を元に、オイ・ニュングとヤザンがスパイスを加えた次なる一手。それは、逃げ散る連合艦隊残党を、ズガン艦隊が追撃することで生じるザンスカール本国の隙をついた上での強襲だ。
ザンスカールは、サイド2を完全に盤石な支配圏にしたいから、多少本国が手薄になっても、この機を逃したくはないはずだった。
そういうズガン艦隊の心理をついているから、一見無茶な首都空襲は成功の確率は低くはない。無論、高くもないが。
それでも、これをやることで敗戦の世間体を取り繕えるし、マケドニアコロニーに大恩を売れるのは間違いない。そういうジン・ジャハナムの思惑が透けて見える。
それにしても、とヤザンは溜息をつきながら愚痴るようにして伯爵へ言う。
「俺も随分、少年兵とか女兵士に慣れたもんだ。
気づけば戦場は女子供だらけで、今じゃ俺がせっせと女子供を戦場に送っているなんてな。
……ハッ!慣れってのは怖いぜ。俺達はろくな死に方ができんよなぁ伯爵」
「あぁ全くだな」
この二人が共に行動を共にするようになってから、幾度となく交わされた同じ話題だ。
人とは慣れる生き物だから、互いに自分が汚い大人だという事を忘れない為の、確認の儀式という意味合いもあるのかもしれない。
深く長く息を吐いた後、オイ・ニュングは端末を弄って様々なデータを見比べつつ、ヤザンに最後の確認をする。
「――では、この手筈で行く…という事でいいのだな、隊長」
ヤザンの首が縦に振られたが、どこか嫌々といった雰囲気があるのが珍しい。
きっとこの悪辣な知恵者の伯爵は、自分の経歴をしった上でこの作戦を立てたのだろう。それはきっと、経験値故にそれが出来ると踏んでの事だろうが、ヤザンは「嫌がらせをして、遠くから眺めて楽しむ気か」と言ってやりたい所だ。
愚痴るような口調で、伯爵へと返す。
「作戦立案の最終決定権はあんたにある。それに、ウッソへの責任を果たすためにはな…仕方ないさ。やれやれ…、アメリア侵入の為とはいえ、俺がガキと一緒にジ・ャ・ン・ク・屋・なんぞに化ける羽目になるとはな」
一家言あるリーゼントヘアを雑に撫で上げて溜息を吐き出す。
因果というものを感じずにはいられないヤザンだった。
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