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ヤザン・リガミリティア
妖獣の手のひら
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に誘い出したのだと理解していた。

確かに進路予想をしたのはオイ・ニュングとヤザンだが、自分のニュータイプ的な勘も、こちら方面で良いと告げていた。論理的にもニュータイプ的にも、今回は鈴の音に上を行かれたというのがウッソには分かる。

血が滲みそうな程に唇を噛み、操縦桿を握る手すら震える。

ウッソは悔しかった。

初めて自分が無力に思えたし、大切だとは思っていたシャクティが、自分の予想よりももっとずっと大切な存在だとも理解させられる。彼女がいなくなり、即座の救助が無理と分かった今、ウッソは身も心も裂けそうだった。

そんなパイロットの煤ける思いを反映させるようなV2の去り様を、遥か彼方の宇宙の海で、一人揺蕩うザンネックが心眼で見送っていた。

 

「うふふふふ…やはり速い。いい判断だよ、坊や。そしてヤザン…!

姫様はそこにはイやしないって、もう気付いてしまったんだねぇ。そうか…坊やにとって姫様はそんなにも大切な人かい?あははは!

もう少し私と遊んでくれてもいいのに、ヤザンも坊やも…なかなか私に夢中になってくれないのは嫉妬しちゃうじゃないか。ふふ…、まぁこんな遊びは手慰み程度…うふふ。

……さて――」

 

ペロリと、ファラ・グリフォンは蠱惑的な唇を舐める。

 

(ゲトルの奴は乗せやすくていい。これで、戦場に咲く徒花はもっと多く、もっと綺麗に咲き誇ってくれる。これでいい…もっと、もっとだよ…。メッチェ…お前の所に、もっと送ってあげるからね)

 

味方の中にすら不和をばら撒いて、そしてもっと多くの者に踊ってもらいたい。

それが今のファラ・グリフォンの願い。

そしてその中の、その中心にヤザン・ゲーブルと坊やウッソがいてくれれば、きっとメッチェがいない今生でも自分は楽しめるはずだ。

 

「独りは寂しいものね」

 

ファラ・グリフォンは、独り、鈴の音を響かせてザンネックの胎内で笑っていた。

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

優秀なリガ・ミリティアの諜報部からの情報と、戦場で会敵したヤザンやウッソからの情報を擦り合わせていけば、恐るべき敵エースの鈴の音野郎≠フ正体もいつかは判明する。

あの恐るべきMSに乗っていたのは、失脚し消え去ってくれたと思っていたザンスカールの処刑人、ファラ・グリフォン中佐その人だ。

ファラ・グリフォンは、リガ・ミリティアが追撃してくるであろう逃走路を予測してみせた。

そして、未完成の試作サイコミュMSの、思念波受信機能だけを使って、ニュータイプのウッソをも欺いた。

ファラ・グリフォンの、ラゲーン司令時代に
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