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英雄伝説〜西風の絶剣〜
第84話 西風の絶剣VS魔弓のエンネア
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「はっ!」


 そしてエンネアは弓を持つ反対の手で矢を指と指の間に挟み込んでリィンを斬り付けた。斜め右上に振り上げられた一閃がリィンの頬を切り裂いた。


 更に追撃で顔に目掛けて突きの連打を放つエンネア、リィンはそれを回避しながら後退する。


 そこに浮いていた矢が素早く動きリィンに目掛けて飛んできた。リィンは分け身に援護してもらいながら矢をかわした。


「矢を操れるのか!?」
「ええ、貴方と同じ私もD∴G教団で人体実験をされた、その際に得た力がこれよ」
「なんだと……!?」


 エンネアの言葉にリィンは驚愕の表情を浮かべた。まさか目の前の女性があの教団で自分と同じ人体実験をされていたとは思わなかったからだ。


「生き残りがいたのか……」
「ええ、私を救ってくださったのはマスターよ。あの方の為ならなんだってする、こんな卑怯な手もね……」


 エンネアが矢の先端を見せる、そこには液体が塗られており光に反射していた。


「グッ……!?」


 するとリィンの体に異常が起きる、腕や足に鈍い痺れが襲い掛かってきたのだ。左腕以外が上手く動かせなくなってしまった。


「薬か……!」
「ええ、この矢にはさっき貴方の動きを阻害した薬が塗られているの」


 リィンは斬られた頬に意識を向ける、その時に新たな薬を体に入れられたことを悟った。


「そこよ!」
「しまった……!」


 更に追撃で分け身に矢が刺さり消滅した、これでリィンは丸裸になってしまった。


「さあ、これで終わりよ」


 エンネアは十分に距離を取るとリィンに向けて矢を構える。


「降参しなさい、そうすれば命までは奪わないわ」
「ぐっ……」
「猟兵は命を大事にするのでしょう?賢い貴方ならどうするか分かるわよね?」


 エンネアの言葉にリィンは悔しそうに歯ぎしりする、そして彼の脳内に嘗てルトガーに言われたある言葉が浮かび上がった。


『団長はどうしてあの時逃げなかったの?あんな軍勢を前にたった一人で殿をして……死んでいてもおかしくなかったんだよ?僕には逃げろって言ったのに団長は守ってないじゃないか!団長が死んだら僕嫌だよ……』
『ごめんなリィン、だがな俺はお前に嘘をついたわけじゃないんだ。命があってこその猟兵だ、確かにあの場は俺も逃げるべきだった。だがな、男には時に絶対に逃げられない時が来るんだ。もしあそこで逃げていたら俺は仲間を失っていたしもう二度とあの場には立てないって思ったんだ』
『団長……』
『でもお前は真似すんなよ?死んじまったら意味ねえからな』


 がははと豪快に笑うルトガーをリィンは憧れを込めた眼差しで見ていた。そんな昔を彼は思い出してい
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