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私の 辛かった気持ちもわかってよー
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 3人で店の裏手にある家に戻るとダイニングのテーブルにはお料理が並んでいて、桔梗も珍しく台所で何かのお手伝いをしていた。

「健也 今年もご苦労さん」と、早くもお父さん達はお酒を飲み始めたのだ。

「健也 地元に帰るんだろう?」

「えぇ まぁ 明日の昼過ぎにぶらっと 帰るカナって思ってます 正月はあんまり良い魚が無いんですけどネ それでも三国のほうがうまい魚とか 喰えますからー」

「そうだろうなぁー ワシも もう5年ほど行ってないかなぁー 健也はウチに来て7年になるなぁ 早いものだ だけど、健也が居てくれて 本当に助かってるよ」

「俺なんて そんなことないっす まだまだ 親方に仕込んでもらわないと 半人前です」

 二人は、箸も進んでいて、ようやく私達3人がその横で食事をとり始めたとき

「山葵 冷蔵庫に いくらの和え物の食材があるはずだから 健也とワシに作ってきてくれ」と、お父さんが急に言い出して、リビングのソファーに健也さんと移動していった。

 なんでー 私 ようやく 食事にありつけたのにー なんか、私に厳しいーよぉーお父さん。

「いえ 親方 俺はいいですよ 山葵は ご飯を・・・」

「いいの 気にしないで 健也さん 作るから 食べて」と、私は席を立って冷蔵庫に向かった。

 桔梗はさっさと先にお風呂に入って部屋に引っ込んでしまったのだが、私とお母さんは酔っぱらってきているお父さん達のつまらない話に付き合っていたのだ。私とお母さんはお父さんより先にお風呂に入ったことが無かった。私は試合の日でもシャワーだけ済ませて、昔から後で入っていたのだ。その間にもお母さんは酔っ払いの突き出しを作っていて、10時頃になって、お父さんが

「そば だ 山葵 だし汁作れるだろう?」と、私に、また、無茶振りしてきた。私 そんな二人に出せるような味のもの作れないのにー。だけど、今年の締めくくりの蕎麦になるはずだろうからと、酔っ払いにおいしいものをと、考えながらありったけの知識で作っていた。

 桔梗はもういらないと言っていたので、4人分を作って、最後にとろろ昆布を乗せてー、恐る恐る出したのだけど、健也さんが一口食べて

「うまい! うまいっすよ いゃー お嬢さんの作ったのって 感激です」と、おつゆも全部 飲み干してくれた。お嬢さんって もう 戻ってたけど。そして、お父さんも何にも言わなかったけど、やっぱり飲み干してくれていたのだ。私は、自分ではおいしいとは感じていなかった。ごく普通、どっちかと言うとおいしいとは言えない。

 健也さんも帰って、お父さんはお風呂に行って、お母さんと洗い物をしている時

「ねぇ お母さん さっきのだし汁どうだった?」と、聞くと、首を横に振っているだけだったのだ。

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