暗闘編 ヘレン・アーヴィングという女 後編
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「ウグォアァアッ……! アノオンナ、アノオンナノセイデェッ……! コロス、コロスコロス、コロシテヤルゥウッ……!」
爆炎に焼かれた人工皮膚は醜く爛れ、内部の機械が幾つも露出している。機械と生身が歪に混じり合った人体模型のような、醜悪極まりない戦闘員の姿は、さながら生ける屍のようであった。山地のアジトが跡形もなく吹き飛ぶほどの爆炎を浴びて、なおも辛うじて生き延びていた個体が居たのである。
旧シェードの元被験者である「失敗作」の他、その技術を模倣・流用した各国政府製の「粗悪品」も含まれているノバシェードの構成員達だが――中にはごく稀に、高いポテンシャルを秘めた「突然変異体」が含まれているのだ。かつて組織を率いていた明智天峯、上杉蛮児、武田禍継の三巨頭がそうだったように。
自分達を破滅に追いやった真凛・S・スチュワートに対する限りない憎悪。その絶大な怨恨は、肉体を凌駕するほどの精神力を齎していたらしい。彼女に対する憎しみだけで動き、全ての理性をかなぐり捨てた正真正銘の「怪人」は、白目を剥いて全方位に殺意を向けている。
「コロス、コロ、ス、コロスゥウッ……!」
強烈な怨念を帯びた唸り声が、その迫力をさらに引き立てている。人外の怪物にしか出せない、悍ましい迫力。そんな圧倒的なプレッシャーが、対峙する警察官達を襲っていた。
「け、警部っ! あ、あの化け物……! 間違いありません、ノバシェードの改造人間ですっ! アーヴィング捜査官が言っていた通り、ここは奴らのアジトだったんですよぉっ!」
「ちっくしょうがぁ……! 心底気に食わねぇが……全部、特務捜査官殿の言う通りだったってことかよッ! 撃て撃てぇッ! 怪物相手に遠慮なんざ要らねえ、市民に被害が出る前に撃ち殺せぇッ!」
「こ、この、このぉっ! 俺らのそばに近寄るなァァーッ!」
その異様な姿に動揺する警察官達は、即座に発砲を開始していたのだが――改造人間としての耐久性は辛うじて健在だったのか。生き残りの戦闘員は斃れることなく、その身を引き摺るように警察官達に迫ろうとしていた。
「ひ、ひぃあぁあっ! 来るな、来るな来るなぁぁあっ!」
「コロ、スゥッ……! ヒトリデモ……ミチヅレニィッ……!?」
やがて、弾切れを起こした警察官の目前に死に損ないの戦闘員が迫る。乾いた銃声が響き渡り、戦闘員の頭に1発の銃弾が命中したのは、まさにその瞬間であった。
「……生憎だけど。死ぬのはあなた独りよ」
「と、特務捜査官殿っ……!」
真凛・S・スチュワートから受け継いだヘレンの愛銃――「ワルサーPPK」が火を噴き、急所の脳を撃ち抜いたのである。鋭く目を細め、両手持ちで
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ