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ヤザン・リガミリティア
獣と龍と
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飛んでくるデカブツの残骸を殲滅せしめるパワーは既に無く、ベスパカラーのドッゴーラはテールノズルに尾を引かせて迫る大質量を回避せざるを得ない。

そして案の定というべきか、回避方向には既にV2が待ち受けていた。

 

「そうくると思ったぞ!」

 

しかしピピニーデンとてヤザンとの戦いは初めてではない。

しかも以前よりも彼の反応速度も強化されていて、予知紛いの事までやってのけるから、ヤザンの動きは折込済みだった。

既に小脇に構えられたドッゴーラの右腕のビームガン砲口からはサーベルが形成されている。

 

「死ねぇ、ガンダム!!」

 

そう叫ぶピピニーデンの顔は、あのヤザンを上回ってやったという優越感と、強化された己のパワーを実感しての万能感を存分に浮かべて、人の愉悦的感情が剥き出された邪な笑みに見えた。

宇宙世紀に生きる者なら誰もが知るガンダムと、そしてそのMSを駆る伝説的組織ティターンズのエース、ヤザンという、その凶悪なコンビネーションを自分は超越したのだ。

そういう歓びがピピニーデンをより昂ぶらせて、そしてその視野を狭窄にする。

 

(っ!…ま、待て!なぜ、なぜだ?なぜガンダムの下半身が無い!?ヤザンは私に何を仕掛ける!?)

 

だから今更に気付く。

ガンダムタイプの下半身が無い。

ヤザンは操縦桿のトリガーをうずうずとした様に一度、二度と素早くなぞり、そしてほくそ笑みながら引き金にセットし、待つ。

 

「ウッソ、帰ったら貴様にも一杯奢らにゃならんな…!」

 

今度の戦闘では愛弟子ウッソの得意技を多く借りて、そしてそれが無ければ勝つのは難しかったとヤザンでも思う。

 

(あいつの手癖の悪さは大したもんだぜ!)

 

次々に奇想天外な戦法を編みだす柔軟な思慮と発想は、ヤザンの舌も大いに巻くものだ。

そしてそれをヤザンは手放しに称賛していた。

戦いとは相手の意表を突いた者が勝つ。

 

ドッゴーラの真下から、高速でV2の下半身ブーツが突進してくるのがピピニーデンの意識の隅に映る。

 

「し、下か!!」

 

ピピニーデンは反応してみせ、そしてドッゴーラを素早く引いた。

瞬間、ドッゴーラの鼻先をかすめるボトムリム。

だがそれを待っていたように、ヤザンは引き金をひいた。

 

「いい子だ…やはり素直だぜ」

 

ニヤリと口の端を釣り上げて、獣が駆るガンダムの銃口からビームが解き放たれる。

 

「っっ!!!」

 

光が迫るイメージがピピニーデンには見えて、そして死の恐怖を感じ取った彼の本能は意識を超えて咄嗟に指を動か
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