誰が為に獣達は笑う
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合前に高まる血潮と緊張感を、ヤザンは楽しんでいた。
「…はぁ。全くあなたって呆れた人よね。
あなたの部下が初陣しようって戦いが大規模になるかもっていうのに、
何か部下私に掛ける言葉でもあるでしょう?」
カテジナは座るヤザンを見下すようにしながら細い鼻をフンと鳴らす。
「なんだァ?俺にお優しい言葉でも掛けて貰いたくてわざわざ話しかけに来たのかよ」
「自惚れないで。一般常識を言っただけよ。
普通、ま・と・も・な・上官ならそうするって」
「俺がそこらのまともなつまらん男に見えるか?」
「見えないわね」
「フッ…言ってくれるぜ。こちらだってま・と・も・な・新兵相手ならそうもしてやるさ。
だが相手がお前じゃな。そんな必要なかろう」
「…どういう意味?」
少女はムッとした顔で男を睨んだ。
「お前は俺と同じニオイをさせる奴ってことだ」
カテジナは睨んだままヤザンの言葉を脳で咀嚼し考える。
考えた結果、生まれてきた感情はやはりいつも通り二つの系統のものであった。
一つは、生まれと育ちの良い自分が
戦場で人殺しをする粗野な男と同類と思われた屈辱と怒り。
二つは、温室育ちのあ・ま・ち・ゃ・ん・な自分が、
逞しい戦士に認められたという大きな喜び。
「…っ」
カテジナの表情が何とも複雑に歪んだ。
怒っているような、笑っているようなもの。
破顔させて喜びたいのに無理やり意地になって怒っている…そんなへそ曲がりな子供の顔。
「だ、誰がアンタなんかと同じもんですか」
「同類さ。少なくともそうなりつつあるぜ、お前」
「…私はまだ戦場で人を撃っていないわ。何を根拠に」
ドリンクを飲み干したヤザンが、ぐしゃりと空の器を握りつぶしてダストボックスへと投げる。
「暇さえあればシミュレーターに乗っている。良い心掛けだ」
切れ長の瞳でヤザンを見ながら、少し頬を染めてそっぽを向いて言い返す。
「そんなの、あなたが言ったのよ。戦場で生き残る為にはトレーニングを欠かさない事って」
「ハッ!あぁ言ったな。けど見てりゃあ分かるんだよ。
兵士には色んな人種がいる。当たり前だが肌が黒いだの白いだのじゃない。
考え方だ…分かるな?」
カテジナは黙って上官であり先達の戦士のレクチャーに耳を傾けた。
沈黙を肯定と受け取ったヤザンは言葉を続ける。
「自分が死にたくないから引き金を
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