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ヤザン・リガミリティア
蜂を囚える獣
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ことにさすがの彼もびっくり仰天で、

しかもシャッコーが急にバックしたものだからとうとう滑り落ちる。

 

(そんな…僕は、こんなとこで死ぬの…!?シャクティ!)

 

少年、ウッソ・エヴィンが絶望の表情で落下して、

その時に心で叫んだ名はいなくなった両親のものではなく、

憧れのウーイッグのお嬢様の名でもなく、

共同生活者であり妹のような存在の少女の名であった。

心でシャクティの名を叫んだ直後、ごちんっという鈍い音がウッソの後頭部からした。

 

「あいてっ!!」

 

落下ってこんな早く地面につくのか。

あの高度から落ちて頭をぶつければ頭蓋骨が砕けるなり脊髄がやられるなりで

意識は一瞬でもっていかれると思っていたのに、案外転んだだけの時と似てるな。

 

ウッソはそう思ったが、どうにも地面に落ちたのではないらしいと気付いた。

 

「モ、モビルスーツが受け止めてくれたの!?」

 

ウッソは大きな鋼鉄の掌の上に転がっていたのだった。

 

(あの状況で落ちる僕を無事に受け止めるなんて…!この人、凄いぞ!)

 

ジェムズガンのゴーグルは少年を一瞥することなく、

 

「小僧!死にたくなければ指にしがみついてな!」

 

MSから響いた声にウッソは慌てて指示通りに全力で指に抱きついた。

 

(この人、戦う気!?僕を手のひらに乗せたまま!?)

「うわぁぁ!!!」

 

猛烈な風圧がウッソを襲う。

クロノクルはその様を見て、怒った。

 

「子供を盾にしようというのか…!そうであろうな!

そんなガラクタでは、このシャッコーに勝つためにはそうせねばなるまい!

卑劣なゲリラの考えそうなこと!」

 

退がっていたシャッコーが、

切り上げたサーベルを戻しそのままジェムズガンへ斬りかからんとし今度は急速前進。

 

(そのでかいライフルのサーベルはリーチがあるが、懐に飛び込んでしまえば!)

 

ようはビームスピアだ。そうクロノクルは判断した。

槍は剣よりも射程のある恐ろしい武器だが、掴みかかれる距離までくれば剣が極めて有利。

距離を急激に詰め返してくる新型MSを見て、ヤザンは笑う。

何から何まで自分の思う通りに動いてくれる敵だ、と。

 

「素直だな!いい子だ!」

 

ヤザンはフェダーインライフルを相手へと投げつけるように捨てた。

 

「うっ、こいつ!?」

 

サーベルを振り上げた瞬間に眼前に突然物を投げられれば、

それを切り捨ててしまうのが人の心理だろう。

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