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友の死
第一章

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                友の死
 榊原康政は徳川家の重臣中の重臣武の柱である四天王の一人として名を馳せていた。この時彼は徳川家の嫡男秀忠の傍にいて真田家の城信州上田城を攻めた後でだった。
 城の攻略を諦め秀忠そして彼が率いる大軍と共にだった。
 合戦が行われた関ケ原に向かう途中でその話を聞いてだった。
 この時康政は秀忠そして居並ぶ諸将と共に飯を食っていたが思わず箸を落としそうになりそのうえで言った。
「何ということか」
「刑部殿のことだな」
「はい、敵となられましたが」
 康政は大将の座にいる秀忠に応えた。
「しかしです」
「そなたと刑部殿はな」
「随分と親しくしていました」
「友であったな」
「左様でした」
「出来た御仁であった」
 秀忠が見てもだった。
「あの御仁はな」
「はい、ですが」
「戦の常である」
「そこで命を落とすことは」
「そうだ、これは我等にも言える」
 康政の気持ちを慮りながら話していった。
「先の戦ではな」
「それがし達がです」
 康政も応えた。
「首を取られていてもです」
「仕方なかったな」
「それが戦、まして刑部殿はです」
「話を聞くとな」
「ご自害だとか」
「立派な最期だったというな」
「はい、ですが」
 それでもとだ、康政は言うのだった。
「やはりです」
「友であったからだな」
「無念です、ではです」
「関ケ原に着いたらか」
「殿にお目通りさせて頂き」 
 家康、主であり秀忠の父である彼にというのだ。
「遅参の責を取り」
「いや、それはわしが行う」
 秀忠は康政に笑って応えた。
「何しろわしが大将だからな」
「だからですか」
「うむ、それでだ」
 その為にというのだ。
「遅参のことはな」
「若様がですか」
「そうする、そなたもここにいる者の誰もがだ」
 他の諸将達にも話した。
「責を感じることはない、あくまでだ」
「大将であられる若様がですか」
「責を取る、そのことは気にするでない」
「有り難きお言葉」
「してそなたはな」  
 責の話をしてから康政に再び話した。
「刑部殿のことをだ」
「はい、友として」
「やるべきことをする様にな」
「そうさせて頂きます」
 康政は秀忠の思いやりに感謝してだった。
 彼そして軍勢と共に関ヶ原にいる家康の下に馳せ参じた、秀忠が家康に叱られ遅参の件は終わりとなり。
 康政は家康に申し出ようとしたが家康は先に言ってきた。
「刑部殿のことはお主の思う様にせよ」
「そうしていいのですか」
「わかっておる」
 優しい笑顔で告げた言葉だった。
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