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船の名前
第一章

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                船の名前
 致し方なかった。
 彼等はイングランドを去るしかなくなっていた、ある者はこう言った。
「家を出るしかないんだな」
「さもないとよ」 
 その者の妻が言ってきた。
「私達は火炙りよ」
「異端だからか」
「王様がそう言われてるから」
 だからだというのだ。
「それならよ」
「家に残ってか」
「イングランドに」
 即ち自分達の国にというのだ。
「それでよ」
「異端ということで火炙りにされるか、か」
「それかね」
「国を出てか」
「植民地でよ」
 そちらでというのだ。
「暮らすかよ」
「新大陸のか」
「ええ、どちらかよ」
「新天地に言ってもな」
 その者は溜息混じりに言った。
「何もないだろ」
「お家も畑もっていうの」
「何もわかってないし何もない場所だろ」
「そうよ」
 妻も否定しなかった。
「行ってもね」
「そこに行ってもな」
「どうなるかわからないっていうのね」
「そうだろ」
「けれど残ってもよ」 
 妻は夫に深刻な顔で言った。
「もうね」
「火炙りが待ってるだけか」
「そうならなくても」
 火炙りにというのだ。
「王様はよ」
「俺達を邪魔に思われてるな」
「ピューリタンをね」
「悪い教えじゃないと思うがな」
「私達はそう思ってもよ」
 それでもというのだ。
「王様から見たらよ」
「ピューリタンの教えはか」
「異端でね」
 そうみなされるものでというのだ。
「もうよ」
「罰するものなんだな」
「だからね」
「逃げるしかないか」
「そしてそちらでよ」
 逃げた先、新大陸でというのだ。
「生きていくしかないのよ」
「そうなんだな」
「だからね」
「ああ、プリマスに行ってか」
「そこから船に乗ってね」
「新大陸に行って
「そこで暮らすのよ、あそこならね」
 新大陸ならというのだ。
「流石によ」
「王様の目もないな」
「広い海が間にあって」
 大西洋この海がというのだ。
「それでよ」
「王様の目も届かないか」
「異端がどうとか言う人達もね」
 迫害を直接加える者達もというのだ。
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