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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第89話 自称後見人
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つ以上増える。アスターテ星域会戦時の第四艦隊と金髪の孺子の戦力差が七〇〇〇隻と考えると、到底愉快ではない結末が見えてくる。

「星系内で各個撃破をするには、些か長居をし過ぎましたな」

 モンシャルマン参謀長の口調は冷たい。周辺星系への分散偵察を行っていたにせよ、本隊は二月上旬からカプチェランカ星系に留まっており、その戦力については敵も十分に把握している。それ故に数的優位を確保してから星系内に侵入してきたと見るべきだ。

 各個撃破するとしても、アスターテ方面から侵入してきた六〇〇〇隻に対しては優位でも、ティアマト方面から侵入してきた一万七〇〇〇隻に対しては不利だ。そしておそらくアスターテ方面から侵入してきた敵は、第四四高速機動集団が戦ってきた相手だろう。星系内機動戦による各個撃破の危険性は、つい先日味わったばかりだ。すぐさま一万七〇〇〇隻の本隊と思える部隊への合流を果たすべく機動するとみていい。それに残念ながら艦隊が駐留する惑星カプチェランカの現在公転軌道位置は、各跳躍宙点とは恒星を挟んで反対側。合流を阻害する行動は時間的に不可能だ。

 現時点での戦力構成を考えれば、両翼いずれかに第四四高速機動集団と独立部隊の連合部隊で、中央に第八艦隊となる。少数側が部隊を分けて分散進撃するほどシトレも耄碌はしていないだろう。となれば、惑星カプチェランカ衛星軌道上での戦闘となる。敵艦隊が惑星カプチェランカに到着するまでのひとまずは一二時間、時間的な余裕がある。

「また、作戦司令部より第四四高速機動集団は惑星標準水平面に対し、A象限X10-Y50-Z50の宙域へ哨戒戦力を出し索敵を実施せよ、とのことです」

 ファイフェルの持ってきた通信文に目を落としていた爺様は案の定、口をへの字に曲げで顔を向きもせずにモンシャルマン参謀長に手渡した。手に取った参謀長があきれ顔で溜息をつきながら小さく首を振る。

「これはマリネスク副参謀長閣下のボロディン少佐に対する意趣返しのつもりですかな?」
「ケツの穴が小さいエリートなど、存在価値が疑わるな。のう、ジュニア」
「精進いたします」

 勿論第八艦隊からもティアマト星域への跳躍宙点があるA象限(XYZ軸+)への哨戒戦力は出るのだろうが、ただでさえ長距離航海と艦隊戦やってきて数を失っている付属部隊に、哨戒戦力を抽出せよというのは悪意以外考えられない。周辺視野で無表情で立つブライトウェル嬢を確認しつつ、俺は司令部直属の宇宙母艦と連絡を取ってスパルタニアンを出動させる。

 同時に爺様は集団全艦に三時間三交代三ワッチの休息を取らせた。すぐに戦闘になる可能性はなく、敵戦力の方が多く機動戦を司令部が指示することは常識的にありえず、増援が到着するのは七日後。戦い始めればほとんど休息はとれない。カプチェランカ
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