第89話 自称後見人
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れるんですね」
トントンと右肩を指で叩かれ、首を振れば若作りのヤンが苦笑を浮かべている。前世の頃の、銀河英雄伝説を読み始めた頃の多感な俺だったらどう思っただろう。地球教徒に気を付けてくださいとか言ったのだろうか。
「いや想像力に豊かなだけだよ。そういえばヤン、ラップ達とはちゃんとつるんでいるのか?」
「いますよ。あ、もちろんワイドボーンにも声をかけてますが、以前はともかく最近頑なに拒んでますね」
「本当に面倒だな、英雄って奴は」
「まったくです。なりたくてなったわけではないんですが」
ワイドボーンのヤン・コンプレックスはもしかしたらエル=ファシルのせいで強化されているかもしれないが、とりあえずラップはまだ病気にはなっていない。防ぎきれるかは分からないが、病気がなければ今頃は……とアッテンボローが言っていたはずだ。あの会議室の真ん中あたりで笑っている『顔だけゴリラ』には勿体ない。
「ハイネセンに戻ったら、ちょっとマルコム君の精神的成長を促すとしようか。ヤン。協力してくれるな?」
「いいですよ。ラップと、時間が合えばアッテンボローも連れてきます」
「割り勘でいいな?」
「何言ってるんですか?」
わりと真面目な表情で瞬時に聞き返してくるヤンに、俺も返す言葉がなかった。
◆
二月二六日 一〇四五時
地上軍からカプチェランカの攻略について、地表のほぼ三分の二を制圧しあと二週間あれば制圧可能で、以降は掃討戦になるとの連絡が届いたタイミングだった。
「敵は第一および第二跳躍宙点よりほぼ同時刻に出現。ティアマト星域側第一跳躍宙点より一万七〇〇〇隻。アスターテ星域側第二跳躍宙点には六〇〇〇隻、とのことです」
第八艦隊旗艦ヘクトルからの公式通信を受け取ったファイフェルの説明に、司令部の面々は眉を潜める。合計すれば二万三〇〇〇隻。第八艦隊司令部の公式想定よりも二割以上多い。
「第一〇艦隊はすでにシヴァ星域ズィヴィエ星系まで進出しておりますが、このカプチェランカ星系まで早くても七日はかかります。また第四艦隊は即応待機ですので、現時点ではハイネセンを出ておりません」
そう。ヤンと話した後にハイネセンの宇宙艦隊司令部から届いた知らせが、これ。結局、国防委員会は未だ帝国軍との交戦の無い状況から一個艦隊の出動のみ認め、残りの一個艦隊を戦況に応じて投入するという話になったのだ。
統合作戦本部と宇宙艦隊司令部は流石にバカではないので、敵の迎撃想定日を逆算して事前に第一〇艦隊だけは動かしてくれていたのだが、結果的にそれを政治側に逆手に取られた形となった。そしてその結果、三割増しの敵艦隊と戦うことになる。
三割というとそれほどの差ではないように思えるが、五五〇〇隻差となると最低でも攻め口が一
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