暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第89話 自称後見人
[5/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ば、流石にフェザーンの駐在武官も感づく。定期的な駐留艦隊要員の交代はあるにせよ、仮に一個艦隊分丸ごと代わるにしても両方を指揮するには、普通は上位者が必要になる。ラインハルトが要塞到着早々レグニッツアに攻撃命令を下されたのも、要塞にミュッケンベルガーがいたからだ。

 だいたい同格の要塞防御指揮官と駐留艦隊指揮官で喧嘩するなんて、原作の方がおかしいんじゃないかと思っていたが、捕虜や亡命者によると事実らしい。面子とかいろいろあるのかもしれないが……

「最悪は同格の大将が一個艦隊と共に増援戦力として来るパターンだ。仮にこれを一万五〇〇〇隻として、最大で三万五〇〇〇隻。それ以上はない」
「一番あり得るのはマリネスク副参謀長のおっしゃる通り、近隣の防衛艦隊をかき集めるパターンだと」
「自分のところの上司を信じてないのか?」
「第四四高速機動集団の類まれな戦功を、運がいいの一言で言い切る程度には信じています」
「なるほどね」

 学閥から疎外されている。士官学校を出ていないことをモートンやカールセンほどではないにしても、コンプレックスにしていると言っても過言ではない爺様だ。シトレもロボスもグリーンヒルも数目おく爺様ゆえに、彼ら派閥の領袖の下についている中堅、特に三〇代前半から四〇代半ばの高級幕僚にとってみれば眼の上のたん瘤、頑固なジジイ、と思うのだろう。

 それを嫉妬というのは簡単だ。だが爺様はそういう中堅幕僚達に対しても気を廻している。短気で頑固な爺様という外面は、結局のところ組織に使いつぶされる兵士達の意地の発露もさることながら、そうであっても組織を維持しなければならいという爺様なりの思いやりでもある。それを高級幕僚側も分かってくれればいいのだが、恐らくは無理だ。ただモンティージャ中佐は別部隊の情報将校という俯瞰的な視点から、それに気が付いている。

「第四七高速機動集団ならば」

 指揮官としてだけでなく組織運用上におけるグレゴリー叔父の存在感。四〇代前半で少将。爺様ともシトレとも信頼関係があり、年齢的にも高級幕僚達と同じ。第一二艦隊がどうしてそんな窮地に陥ったかまではわからないが、旗艦ペルーン以下八隻になるまで戦い続ける(そして自決しなければ全滅するまで戦っただろう)だけの部下からの信望の厚さ。

 爺様とシトレが話す横で、笑顔を浮かべつつ白い眼を浮かべているマリネスク准将や、明らかに距離を置いている各独立部隊の指揮官達を眺めて、俺は思った。アムリッツアでウランフとボロディン(グレゴリー叔父)の死を惜しんだ爺様は、当面の戦局における有能な指揮官の喪失というよりも、それ以降の同盟軍再建における組織的指導者の喪失について惜しんだのではないだろうか。

「ウィッティ先輩から聞いてましたが、ボロディン先輩は本当に突然意識飛ばさ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ