第89話 自称後見人
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明することになったわけだが、案の定、第八艦隊や付属艦隊の参謀達からは『四四は運が良かったな』という僅かばかりの嘲笑を含んだ評価が述べられた。実際運の要素は大きかったから、短気な爺様も意外と血の気の荒い参謀長も声に出してキレることはなかったが、握りこぶしの血管がピクピクしているのは見逃せない。
取りあえずは取っ組み合いになることなく「艦隊戦力が来たら、事前の打ち合わせ通りに対応する」という結論に達し、会議は散開。そして俺は会議室の端っこでヤンに捕まったというわけだ。
「ハイネセンの様子は第八艦隊司令部に入ってきているのか?」
「一応は。ただ駐在武官から新たな帝国軍の動向は未だ確認されていないという情報も入ってきました」
紙コップの珈琲を嫌そうに傾けながら、ヤンはつまらなさそうに呟いた。
「先輩はフェザーンにいらっしゃいましたよね? これ、どう思います?」
「二万隻は固いな」
イゼルローンから三〇〇〇隻の増援をダゴン星域と接するアトラハシーズ星系に送り込み、アスターテ星域防衛にメルカッツと四五〇〇隻を配備したのだ。第八艦隊の目的がカプチェランカとはっきりした以上、イゼルローン要塞駐留艦隊の残り一万二〇〇〇隻と帝国辺境駐留の即応戦力が加わり、新規にオーディンから戦力を出動させずとも二万隻程度の遠征軍は編成できる。
むしろフェザーン駐在部が帝国軍の動向を察知しえないという方が問題だ。駐在部が無能というわけではない。俺にとってのドミニクのような、フェザーン人の同盟側協力者は大勢いる。それに物資や船舶の移動、株価の変動、新規国債の発注状況など、軍事活動のベンチマークとなるデータの取得や分析といった基礎的な能力に欠ける駐在武官がいるとは思えない。帝国側が遠征してくる場合はそういった情報も派手に流れるが、逆に迎撃作戦となると掴みにくいのも確かだが。
アスターテ星域にメルカッツ麾下の重戦力を用意し、さらにイゼルローンから増援がでていたことを考えれば、同盟軍の前進作戦についてのある程度の情報は、事前にかつ意図的に帝国側にもたらされていた可能性が高い。その上で未だに帝国軍がまるで手をこまねいているような状況であると言わんばかりの情報が来るということは、何者かが情報に介在していると見るべきだ。
イゼルローンを空にできるかは分からない。が、こちらがイゼルローンを攻略しないことを知っていれば話は別だ。三個艦隊動員して失敗した要塞攻略を、たかだか増強された一個艦隊でイゼルローン要塞を攻略するとは、誰も考えないだろう。まして『半個』艦隊でなんて……まだまだ若いヤンの横顔を見つつ、俺は思った。
「三万隻は超えない、と見ても?」
「いいと思う。それほどの規模だと指揮官は大将では済まくなる」
元帥・上級大将クラスが動くとなれ
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