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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第89話 自称後見人
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「何しろ俺達がダゴン星域に入ったことは帝国軍もご承知のことだろう。去年自分達がイゼルローン攻略部隊相手にやった補給線襲撃を、今度は自分達にやられるわけにはいかないと考えているだろうし」
「カプチェランカ星系より帝国側のハルパス星系に集結後、艦隊決戦を挑んでくるのはまず常道として、その数ですよね」
「第八艦隊自身が事前に情報を漏らしている可能は低いから、政治ルートか後方ルートかフェザーンか。ジャムシードで感づかれたとして、我々が主力と合流する二月二四日以降になっても帝国艦隊がカプチェランカに現れていなければ、少し考える必要があるだろう」

 ジャムシード星域で第八艦隊の挙動を感づかれて、その目的をダゴン星域と推定しても帝国軍は容易にはイゼルローン駐留艦隊を動かすことは出来ない。一万五〇〇〇隻という数は駐留戦力としては大きいが、第八艦隊と付属部隊を合わせた数にほぼ互角。イゼルローンを空にするわけにもいかない故に、本土からの増援部隊が主力となる……これは出撃前の作戦会議で出された結論だ。二月二四日は第八艦隊がジャムシード星系を離れてから二五日目。経験則から帝国軍が本土より遠征軍を送り込む最短の日数となる。間違いなく一万七〇〇〇隻を超える戦力が来るだろう。本来なら来寇はもう一〇日は遅くなるはずだったが。

「予算承認、順調にいけばいいんですがね」
「二月はちょうど年度のど真ん中だからな。宇宙艦隊司令部は事前準備をしてくれているだろうが、上手くいかなきゃ予備費出動になる」
「そうなると統合作戦本部長がいい顔しないでしょうね」
「流石にこれ以上シトレ中将にデカい面させるのは、お好みではないようだからな」

 現統合作戦本部長ジルベール=アルべ元帥は来年で本部長改選となる。この戦いは宇宙艦隊司令長官がサイラーズ大将に変わって以降初めての艦隊規模での出征。成功すれば当然シトレの功績だが、同時に作戦を推したサイラーズ大将の功績になる。シトレが大将に昇進するかどうかは微妙なところだが、仮に昇進したとしてポストの問題が出てくる。サイラーズ大将に残されたポストは統合作戦本部長しかない。そうなるとアルべ元帥は必然的に次の改選時に勇退を余儀なくされる可能性が出てくる。

 しかも正式に国防委員会と財務委員会の承認を通さない予備費出動は『事後承諾』となる上、両委員会において統合作戦本部長か次長が後日状況説明をする必要がある。余計な面倒ごとを押し付けられ、さらに自分のポストを危うくするような話など面白いはずがない。次長となると、宇宙艦隊司令官職をサイラーズ大将と争ったロカンクール大将が出張ってくる。

 その点を作戦会議で俺は質したわけで、シトレも重々承知してしっかり根回しはしているのだろう。朝寝坊の幼馴染が財務委員にいるのは大きいとは思うが、作戦を承
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