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渦巻く滄海 紅き空 【下】
七十二 光と闇
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はできないな、と改めて感服する。


ハヤテに関する情報を頭に叩き込んだが、恋人の卯月夕顔をどうするかは最近まで決めかねていた。
火影の暗部であった彼女からは火影に関する情報を得られる為だ。

後々、ダンゾウ率いる『根』と繋がりを持つことになり、表と裏、どちらからも情報を得ることができて一石二鳥だったが、ハヤテ本人の恋人に気づかれる危惧から、結局、夕顔とは別れた。

別れた後も、何故か夕顔の友人である紅や、紅の恋人である猿飛アスマからも別れた理由を問われたが、ミズキにとっては理由はひとつしかない。


正体を隠す為だ。



故に、ダンゾウとナルトの密会を覗き見た際、わざとナルトを嫌うふりをしたし、『根』とナルトを繋ぐパイプ役にも渋々といった風情を装った。

そうしてサスケを木ノ葉の里から大蛇丸のもとへ連れて行くふりをして、実は死を偽装する計画を立てていた音隠れ五人衆のうち、『根』に捕らえられた鬼童丸と右近/左近が潜入捜査している時も逃亡を手助けしたし、木ノ葉の里で囚われの身となった桃地再不斬との再会をも果たした。



その時、再不斬は木ノ葉隠れの里に連行され、厳重に拘束されていた。

拷問・尋問部隊隊長である森乃イビキの眼を盗むこともできない状態で、それもチャクラを使えないよう、牢に閉じ込められ、拘束具で動きを封じられ、印を結べないように拘束されていた再不斬だが、ハヤテの顔をしたミズキによって拘束を解かれ、水分身を作ったことで、水月の兄である満月を『根』の本拠地の地下から奪還できたのだ。


かつて、カブトを騙す為に協力したミズキから懐かしい野心の匂いを、今度はハヤテから嗅ぎ取った再不斬は、月光ハヤテの正体がミズキだと薄々気づいているようだった。


けれどもう、どうでもいい。
本物の月光ハヤテの遺体が発見された今、ミズキには時間がなかった。







だからだろうか。
せめて昔の自分を知る知己にわざと己の正体を示唆するかのような態度を取ったのは。

自暴自棄になっているのかもしれない。
けれど、自分とは対照的なイルカにだけは、さいごに、話をしてみたくなった。

だから誘い出した。

初めて、ナルトと出会ったこの、粗末な廃屋に。
波風ナルに禁じられた巻物を盗ませ、彼女が【多重影分身】の術を憶えたこの小屋に。



共にアカデミーで教鞭を振るっていた旧知の相手を。
うみのイルカを。





「……何故だ、ミズキ。里の仲間を裏切る気か!?」


月光ハヤテがミズキだとようやく確信して、うみのイルカは問い質す。
その声音は悲痛で、今もミズキを友だと信じているかのような甘さすらあった。


「仲間?」
「そうだ、苦楽を共にして
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