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渦巻く滄海 紅き空 【下】
七十二 光と闇
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ミズキは、二度、見逃してもらえた。
それが嬉しかった。
子どもからしたら路傍の石だと思われていても、それでも、三度目があることを期待してミズキは金色を追い駆け続けた。

そしてあの時、崖から子どもを突き落とした忍びを秘かに三代目火影に密告する。
三代目火影の猿飛ヒルゼンは眉を顰め、件の忍びを問いただしたが、逆に逆上したその忍びは里を抜けたらしい。

抜け忍となったソイツは後日、消息不明となった。

その忍びの行く末を、ミズキだけが正しく理解していた。









「よけいなまねを…」

三度、子どもと会えた。


子どもは開口一番、ミズキを非難した。
崖から突き落とした忍びを密告した件についてだと身構えたミズキは、直後、子どもに投げられた言葉に驚き、やがて歓喜した。

「だが…木ノ葉でなくなったならどうでもいい」


木ノ葉の忍びであることは、子どもにとっては重要事項だったようだ。
三代目火影の庇護下である忍びは殺せない。
だが逆に言えば、そうでないなら、どうでもいいといった具合だった。
故に、いずれ逆恨みをしそうな不穏分子は真っ先に処分したのだ。


だから、子どもにとっても、ミズキの行為は都合が良かった。


故に、そこで初めて、子どもはミズキをまともに見た。
その瞳の蒼に、ミズキの姿を認めたのだ。



じわじわとミズキの足先から歓喜が震えあがる。
やはりあの忍びの行く末は里を抜けた時点で子どもに葬られたのだとすぐさま察したが、それさえどうでもよかった。
ミズキにとっては、子どもの瞳の蒼が自分をここでようやく見てくれた、その事実だけが嬉しかった。





ミズキには野心があった。力を渇望していた。力こそが全てだと思っていた。
力さえあれば誰もが自分を認めてくれると望んでいた。他者からの愛情を欲していた。
故に、だからこそ。

圧倒的な力の持ち主でありながら、その力を誇示するわけでもなく。
されど木ノ葉でなくなった瞬間に、猛威を振るう子どもの力に魅了された。

大蛇丸など目じゃない。三忍なんぞ、この子どもの前では霞んでしまう。
ああ、この子こそが己の生きる道だと願った。

子どもの支えでありたいと望んだ。認めてもらいたいと欲した。
自分の力を必要としてほしいと、渇望した。

元々、木ノ葉の里の仲間主義とは相反していたミズキは、子どもを迫害しながら善人ぶる連中に嫌気が差していた。
だからこの里から子どもが抜けると耳にした時は、心から喜ぶと同時に、絶望した。


この悪環境から脱したほうが、子どもにとっては最善だと頭で理解していた反面、もう己はこの子の力には僅かでもなれないのだと悟ったからだ。
ならば一緒
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