七十二 光と闇
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蒼い炎が眼に焼き付いて離れない。
決して忘れることのない、忘れることなど出来ないあの炎の蒼に。
あの時あの瞬間あの時点で。
魅入られ、囚われ、心を掴まれた。
それくらい、鮮烈な蒼だった。
「本当に…ミズキ、なのか…?」
おずおずと、問いかける。
困惑と警戒の入り雑じった視線を投げてくる相手を、ミズキはもう自分のものではない他人の顔で眺めた。
「どういうことだ…その顔は、」
応えぬミズキに、イルカは「変化の術か…?いや、しかし」と戸惑い気味に視線を彷徨わせる。
ミズキの変わり様に驚くイルカに、ミズキ自身が己の変わり様に苦笑した。
「ただの変化じゃない。もう二度と自分の顔には戻れない術だ」
「何故…そこまで、」
己自身を捨ててまで、どうして偽っているのか。
他人の姿形を被り、立ち位置を奪っているのか。
イルカのもっともな意見に、ミズキは「何故、か」と目線を彼方へ向けた。
その瞳には、今現在の光景ではない。
かつて視た光景が映っていた。
初めて、うずまきナルトと出会った景色が。
息を殺して、ミズキは見ていた。
視線の先には、狭くて簡素な造りの粗末な小屋がある。
随分老朽化している廃屋だが、注目すべきはそこではなかった。
忍び達がいる。木ノ葉の忍びではないのは間違いなかった。
侵入者だとはわかっていたが、足が竦んで動けない。
相当の手練れだということが遠目からでもわかる。今のミズキでは到底敵わない相手だ。
それも複数。返り討ちにされるのがオチだ。
だから火影にすぐにでも報告するのが得策だとは理解しつつも、少しでも動けば勘づかれてしまう恐怖で硬直してしまっていた。
故に、せめて状況を把握しようと、茂みに身を潜め、息を潜め、じっと様子を窺っていたミズキは気づいた。
廃屋のすぐ傍に打ち捨てられている存在に。
その瞬間、ミズキの運命の歯車は廻り始めた。
最初は、ボロ雑巾のように思えた。
別里の侵入者の忍び達もそう思っていたのだろう。
やがて忍びのひとりが、そのボロ雑巾の違和感に気づいて、他の忍びに視線を促した。
「おい…コイツ、」
「まさか…九尾のガキか」
ボロ雑巾の布の隙間から覗く、細く小さな青白い手。
泥に塗れているものの、輝かしい金の髪。
まろい頬は赤く腫れあがっており、誰かに殴打された痕だということが遠目からでもミズキにも窺えた。
「息は…あるな」
「人柱力だぞ。化け物が出てきたらどうするつもりだ」
「そういや木ノ葉の里人の一部は、九尾と人柱力を同一視しているとい
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