第3部
ルザミ
空の下の観測者
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するとさらに水平線は丸さを増し、遠くの景色まで見えたではないか。
「あっ、陸地が見える!」
「えっ、見せて見せて!!」
我慢できずにシーラが顔を寄せてきたので、私は彼女に場所を譲った。シーラは器用にダイヤルやレンズの高さを調節すると、あっ、と一声発した。
「ユウリちゃん!! あれ、アリアハンのお城じゃない!?」
「何?」
自分の故郷が映っていると知り、ユウリまでもが望遠鏡に興味を示す。まるで幼い子供のようなや、皆で交互に望遠鏡を覗く。
「……間違いない。あれはアリアハンの城だ」
ユウリは確認するとすぐに望遠鏡から目を離し、フィオナさんに視線を移す。
「ここルザミからアリアハンまでは、そんなに遠くはないんだよ」
確かに世界地図を思い浮かべてみると、アリアハンの大陸はルザミから西に位置している。けど実際はいくら望遠鏡とはいえ鷹の目も使わずに見えるような距離ではないはずだ。何故こんなに遠くの景色を見ることが出来るのだろう。
「一体どういう原理だ? そもそもあんたはどうやってこの望遠鏡を生み出したんだ?」
「それも先祖の残した本のおかげだよ。ちゃんと理論を正しく把握して、順番通りに考えれば、呪文や特技を使わなくても奇跡を起こすことが出来るんだ」
フィオナさんの言葉は、今までにない考え方でとても新鮮だった。それは呪文を使えない私にとっても、不可能を可能にする希望とも言えるべき考えであった。
すると、今まで押し黙っていたナギがゆっくりと口を開く。
「なあ、なんでそこまでして他人と違う知識を得ようとするんだ? こんな誰も来ないような場所でいくら頭使っても、何の役にもたたないだろ?」
「ナギ、それは……」
フィオナさんに失礼なんじゃ……、と言おうとしたが、当の本人に止められる。
「私はね、『根拠』が欲しいんだよ」
「は?」
「定められた運命があるとして、そこに辿り着くまでに何があるのか、どうすればその流れに向かうのか、はっきりと証明をしたいんだよ。ただ漠然と理解するのは、どうも私の性に合わなくてね」
「……」
その答えに、ナギは神妙な顔をして黙りこくってしまった。
「ねえナギ、やっぱり変だよ。いつものナギらしくないよ?」
私が尋ねると、シーラやユウリも同じことを思っていたのか、一斉にナギの方を見る。皆に注目されるも、ナギはそれどころではないといった様子でフィオナさんを見据えている。
「……オレは、この家に見覚えがある。あんたのことはわからないが、オレと同じ髪の色といい、懐かしい感じといい、あんたとはどうも他人の気がしない。あんたは何か知ってるんじゃないのか? もしかして、あんたはオレの……」
「……参ったな。君にそんな目で見られるとは思ってもみなかったよ」
そう言うとフィオナさんは、ナギの目の前まで歩
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