第3部
ルザミ
空の下の観測者
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にある。こっちにおいで」
そう言うとフィオナさんは、私たちを二階へと案内してくれた。ユウリも少なからず興味があるのか、シーラと共に二階に上がる。私も仕方なくあとに続いていくと、ふとナギの姿がないことに気づいた。
「……君も、上がっておいで」
「……」
ただ一人一階に取り残されたナギに、フィオナさんは手招きをして声をかける。返事のないナギに、二人の間に微妙な沈黙が流れたが、折れたのはナギの方だった。
「どうしたの、ナギ? 具合でも悪い?」
「いや……なんでもねえよ」
そう言いながらも俯いている彼の様子に、私はどうすればいいかわからず、見守ることしか出来なかった。
二階に上がると、まず目を奪われたのは外でも見た細長い棒……、いや、巨大な望遠鏡のようなものであった。
部屋の大半を占めるそれは部屋に収まりきらず、窓を突き抜けて空を射抜いている。巨大な筒の先端には覗き穴があり、その穴の周辺には大小様々な突起やネジのようなものがついている。だが、見たことのない形状であり、どう使うのか全くわからない。
「これは……?」
「これは天体望遠鏡さ」
「天体……? つまり空を見る望遠鏡なのか?」
信じられないといった顔でユウリが聞き返す。
「なぜわざわざ遠くの空を見る必要があるのかって顔をしてるね。そう思うのが普通。少なくとも、この世界の人間はね」
「ん? どーゆーこと?」
シーラも訳がわからないといった様子でフィオナさんを見返す。フィオナさんはにっこりと微笑むと、
「私はね、この世界の常識を第三者の目線で観察したいんだよ」
そうきっぱりと答えた。うーん、ますますわからない。
「ためしにこの望遠鏡で、この世界を見てごらん。そう、このレンズを覗き込むんだ」
フィオナさんは覗き穴周辺の突起やネジを色々動かし、望遠鏡の角度や高さを調整したあと、シーラをそれの前に立たせた。彼女がそれを覗き込んだ途端、すぐに歓声が上がる。
「うわあ、すごーい!!」
「何々? 何が見えてるの?」
シーラの反応が気になる私は、彼女に場所を譲ってもらい、レンズとやらを覗き込む。そこに映し出されていたのは水平線だった。だが、船の上で見るようなまっすぐな水平線ではなく、僅かに丸みを帯びている。その奇妙な感覚に、私は違和感を覚えた。
「なんか、普段見ている海と違って丸く見えるんだけど……?」
「そう。これが本来の私たちが住む世界のかたちだよ」
「??」
どうしよう。フィオナさんの言ってる意味が全然わからない。
「つまり、この世界は丸いってこと?」
「さすが賢者だね。ご名答」
シーラの言葉に、フィオナさんは機嫌良く頷く。
「それと、このダイヤルを回してごらん」
私はフィオナさんに教えてもらったダイヤルというものを試しに回してみた。
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