第3部
ルザミ
空の下の観測者
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らなかった。
「すまない、あまり力になれなくて」
フィオナさんは申し訳無さそうに本を閉じた。
「いや、国の形がわかっただけでもありがたい」
そう、私たちには世界地図がある。早速ユウリは鞄から世界地図を取りだし、ジパングの形の島がどこにあるか探し始めた。
「……恐らくここだ」
ユウリが指差したのは、地図のちょうど真ん中あたり。確かに本と同じ形の島だが、載っているのはあまりにも小さく、目を離すとどこにあったかすぐ忘れてしまうほどだった。
「なるほど。地図ではほぼ中央付近に位置しているけど、ここからだと大分距離があるね。……もしそこに向かうなら、アリアハンとサマンオサの大陸の間を通るのが無難だろう。ただ、サマンオサ周辺の海は昔から海賊が横行してるから、なるべくアリアハン側に進んだ方がいい」
「海賊か。厄介だな」
フィオナさんのアドバイスに、真摯に耳を傾けるユウリ。
その後ユウリが船で旅をしていると伝えると、さらにフィオナさんはもっとも安全なルートを教えてくれた。潮の流れや風向きの関係もあり、多少遠回りではあるが、確実にそこにたどり着けるのだと言う。博識なフィオナさんの懇切丁寧な説明に納得した私たちは、ジパングに向けて彼女の提案したルートで行くことを決めた。
「あの、教えてくださってありがとうございました!」
「そう、役に立ったかい? 滅多に人が来ないこの島で、本にかじりついた甲斐があったよ」
「そもそもあんたはなぜこんなところで研究なんかしてるんだ?」
ずっと気になっていたのか、ユウリが口を挟む。それに気分を害することなく、フィオナさんはむしろ先程よりも生き生きとした表情で答えた。
「先祖の血、かな? どうも私の一族は、知的好奇心が人より勝っているらしくてね。なにか疑問が生まれれば、すぐに探求したくなる性分なんだ。ここにある本も、私の何代も前からずっと保管してあるしね。まあ、暇潰しといったらそれまでだけど」
「あー、あたしもわかるかも。本があったら読みたくなるよね〜」
そんなことをシーラが言うなんて、意外だった。視線を変えるとユウリも小さく頷いている。共感できないのって私だけ?
「せっかくだから私の研究の成果を見ていってくれないか? この島の住人はどうも未知への好奇心が薄くてね。誘ってもあまり乗ってこないんだ。君たちはこの世界の成り立ちに興味はないかい?」
「成り立ち……ですか?」
急にそんなスケールの大きいことを言われても、なんだかピンと来ない。
「はいはい! あたしはすっごく興味ある!」
何と答えればいいかわからない私の間に割って入ったのは、目を輝かせたシーラだった。
「あたし賢者だからね! 知識欲なら誰にも負けないよ♪」
「賢者かい!? それは凄いじゃないか。なら君たちにうってつけのものが二階
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