第一章
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外見や肩書きでなく
湯上谷ともりは会社では出来る人間として知られている、その為出世も早く二十代後半で係長になっているが。
「そうは見えないわね」
「私は?」
「ええ、どうしてもね」
学生時代からの友人と飲んでいる時に言われた。
「あんたが係長って」
「じゃあどう見えるのよ」
「中学生よ」
ともりの一四二程の背で茶色のロングヘアに大きな目の童顔といった外見を見ての言葉だ、スーツも無理をして着ている感じに見える。
「もうね」
「中学生って」
「そうとしか見えないわ」
最早という言葉だった。
「はっきり言ってね」
「そうなのね」
「ええ、けれどね」
「けれど?」
「人は外見じゃないっていうのはね」
このことはとだ、友人はともりに笑って話した。
「そうだしね、あんたがお仕事出来るならね」
「それでいいのね」
「ええ、ただ会社でも言われるでしょ」
時分と向かい合ってビールを飲むともりに言った。
「やっぱり」
「直接言われないけれどね」
「そうよね」
「とはいってもね、外見のことはどうしようもないから」
時分ではとだ、ともりは枝豆を食べつつ言った。
「だからね」
「気にしないのね」
「そうしてるわ、ただお仕事をね」
「するだけね」
「私はね、それよりもね」
ともりはこうも言った。
「今自衛隊で定年迎えた人がうちに来たけれど」
「そうなの」
「何か二等海佐までいったそうで」
「結構偉い人だったのね」
「凄い世間知らずで正義感強いのよ」
「ああ、そうなの」
「その人の部下なんだけれど」
それでもというのだった。
「これがね」
「大変なのね」
「そうなのよ」
その上司の話をした、そして。
会社でその上司である桐山和典やや色黒で家鴨を思わせる顔で一七〇位の背の彼と話をした後で部下達に話した。
「部長はいいって言ってくれたけれど」
「それでもですね」
「係長随分お話してましたけれど」
「大変だったんですね」
「ええ、いつも思うけれど悪い人じゃないのよ」
桐山、彼はというのだ。
「けれどね」
「世間知らずですよね、あの人」
「自衛隊じゃ階級高くても」
「それでも」
「ええ、自衛隊以外のことについてはね」
どうにもというのだ。
「全く何も知らないから」
「そうですよね」
「仕事も自衛隊のやり方で」
「もう他のことは知らないから」
「大変ですね」
「かなりね」
こう言うのだった。
「正直骨が折れるわ」
「全くですね」
「紳士なんですけれどね」
「英語も喋れて」
「真面目で」
「けれど世間知らずだからね」
兎角それが問題でとだ、ともりはぼやくのだった。だが。
ある日直接
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