第一章
[2]次話
モノクロドリーム
国崎家の愛犬ふわりは今自分のケージの中でぐっすりと寝ている、丸くなって実に気持ちよさそうにそうしている。
その彼女を見てだ、一家の息子である洋介は父の文太に言った。
「ふと思ったけれどな」
「どうしたんだ？」
「いや、犬も夢見るのかよ」
そのふわりを見つつ言うのだった。
「人間は見るけれどな」
「ああ、聞いたんだがな」
父はこう返した。
「犬もな」
「夢見るのか」
「そうみたいだな」
「そうなんだな」
「ああ、ただな」
ここで彼はこんなことを言った。
「犬は色わからないだろ」
「それ前に聞いたけれどな」
「哺乳類は犬と猿以外色はわからなくてな」
それでというのだ。
「見る夢もな」
「やっぱり白黒か」
「色がわからないんだぞ」
そもそもというのだ。
「だからな」
「最初から色のない世界でか」
「夢だってな」
「色がある筈ないか」
「それでふわりの目からな」
まさにそこからというのだ。
「見る夢だよ」
「そうなるか」
「ああ、ただ夢はな」
これはというのだ。
「ちゃんとな」
「犬も見るか」
「そうだよ」
こう息子に話した。
「ちゃんとな」
「そうなんだな」
「猫だって他の生きものだってな」
人間や犬に限らずというのだ。
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