第3部
ルザミ
辺境の島ルザミ
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がない。物音ひとつしないので、ユウリはイライラしながら何度も扉を叩く。
「おーい! 誰かいないのか!!」
大声で呼びかけるが、それでも返事はない。たまりかねたユウリが左手に力を籠めようとした時だ。
「待て、扉を壊すな!!」
そう諫めたのはナギだった。扉を壊さないのは当たり前のことなのだが、この時私はユウリの行動を止めるナギに対して、妙な違和感を覚えた。
「そうだよユウリちゃん。なんでもかんでも呪文で解決しようとするのは駄目だと思うよ」
……この間ナギの目を氷の呪文で冷やそうとしたのは誰だったっけ。私はシーラを横目で見る。
けど、私もナギやシーラの意見には賛成だ。現にダーマの扉を呪文で壊した時、修理代を支払わされそうになった過去を思い出し、私も賛同する。
「二人の言うとおりだよ。もしかしたら中に人がいるかもよ?」
全員に止められ、さしものユウリも手を下ろす。
「ふん。お前らに諭されるのは屈辱だが、一理あるな」
そう言うと、ユウリは鞄から最後の鍵を取り出した。ダーマのときも思ったが、普通そっちが先じゃない?
だが、鍵穴に挿そうとする彼の手がピタリと止まった。
「この扉、鍵穴がないな」
『!?』
私も気になって扉を調べてみると、確かに鍵穴はなかった。その間にユウリが手を伸ばしてドアノブを回すと、いとも簡単に扉は開いたではないか。
「そうか。田舎だからわざわざ鍵をかけなくても泥棒に入られる危険はないということか」
そう言いながら、なぜか同意を求めるように私を見るユウリ。いやまあ、カザーブにある私の実家もしょっちゅう鍵をかけないことはあったけど、なんだかバカにされているようでムッとなる。
返事がないので仕方ないのだが、なんとなく後ろめたさを感じつつも、私たちはそのまま建物の中に入ることにした。
「ごめんくださーい! 誰かいませんか!?」
今度は私が大声で呼び掛けるが、それでも返事はない。やっぱり外出してるのだろうか。
扉を開けて中に入ってまず目に飛び込んだのは、壁のようにびっしりと建ち並んだ本棚だった。むしろ本棚が壁といってもいい。本棚にはこれまたぎっしりと本が入っており、タイトルを見ただけで頭痛が起きそうなほど難しい単語の羅列が並んでいる。
「ほう。随分と興味深い内容ばかりだな」
「ユウリちゃん、これなんか面白そうじゃない? 『賢者と精霊の関係性について』だって」
「『世界の海と火山』、『エルフ族の歴史』、『精霊神と太古の神々』……。俺が知らない本ばかりあるな」
けれどユウリとシーラにとっては、とても興味のひくもののようだ。私はつい無意識にナギの方へ視線を向ける。するとナギも本棚を興味深げに凝視しているではないか。
くっ……。ナギも私と同類だと思ったのに! なんだか私一人だけ仲間外れにさ
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