21,亀裂
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した。断られると思っていたから、これでいいとしよう。
すっきりとしたところで帰ろうと歩き出した時、遠くの方から何かが超特急で飛んできた。
地味なねずみ色のフード付きマント。そこからはみ出る金褐色の髪。
なにより、その下に描かれたフェイスプリントは見紛うことなく――
「――なぁにをやってるんだヨォォ!!」
俺の相棒、《鼠》のアルゴに違いなかった。
いつものふてぶてしいほどの余裕の面持ちは感じられず、慌てた様子とフロアボスの100倍はあろうかという威圧感を放っている。
下手なことを言うと、言葉の連撃を浴びせられかねないのは対人スキル中級者の俺でも分かり切っている。
慎重に言葉を選びながら、言葉をかけた。
「――よう、アルゴ。お、おはよう?」
「おはよう、じゃないヨ。朝起きたら部屋にいないシ、圏外でピクリとも動かないシ」
俺の対人スキルはまだ初級スキルくらいしかできないらしい。
悪い、と平謝りしようとしたが、遅かった。火に油を注いだアルゴの怒りは留まるところを知らない。
「――あれほど単独行動は禁止ダって言ってたはずなのに……」
怒られて、神妙な顔つきとなっている俺に、アルゴは小さな体をふんだんに使って文句を延々と述べてきた。
その姿はいつもがカピバラみたいなふてぶてしい感じなら、今は小刻みに動くハムスターだ。
「ん、なんだヨ。オイラに何か言いたいことあるのカ?」
反論があんなら言ってみな、と構えているので、
「いや。可愛いな、って思ってただけ」
と告げたら、ハムスターはポカン、と口を開けて急停止してしまった。
瞬時に、かぶっていたフードを両手でギュッと目のラインまで引っ張り、プルプルと震えだした。
あ、やっちまったと思った瞬間には、もう遅い。
さっと顔を上げたアルゴの顔は羞恥で真っ赤に染めあがっていた。涙ぐんだ眼と視線があったのはほんの一瞬。
「クロちゃんのアホんだらァァ」
と大きな拳が突きだされ、俺は宙を舞っていた。
俺の体はアンチクリミナルコードに守られているので痛くはない、というか体に拳が届いてすらいない。
が、ノックバックで吹き飛ばされた反射で自然と呻き声が漏れた。
顔を抑え蹲っていると、なぜだか今度は地面に影が差した。
モデル体型のほっそりとしたシルエット。その腰には細く長い一本の鞘の影が映り、どうしてか柄や鍔の形はない。
「あなたは、散々迷惑をかけてまだそんなことを言えるのですね」
ぎこちない動作で顔を上げていく。引き攣った笑みをヤヨイに向けるが、無機質な笑みが返ってきた。
そのさらに上には抜き放たれた紫電の刀身が太陽の光を受け、キラリと光っている。
「おまわりさん。ぼうりょく、はんたい」
「大丈夫です。ここは圏内なので痛
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