第二章
[8]前話
「そうした娘か」
「はい、それは動物園のものなので」
「動物園?そこから逃げた娘か?」
「まさかと思いますが動物園に連絡しますか」
「そうしよう、脱走したなら問題だしな」
それならとだ、ジョンストンも頷いてだった。
動物園に連絡した、すると彼の家に動物園のウォンバットの飼育係であるイブリン=ウェストン髪の毛はブロンドでグレーの目の目尻の皺が印象的な初老の女性が来て話した。
「その娘はクロエですね」
「それがこの娘の名前か」
「はい、生後二ヶ月で保護されて」
「ああ、うちの子と同じだな」
ジョンストンはウェストンの話を聞いてこう言った。
「うちのブルもな」
「生まれてすぐにですか」
「保護したんだよ」
「それで育てておられますか」
「それであの娘もか」
「保護してこちらの動物園で飼育していまして」
そしてというのだ。
「私に懐いてくれていましたが」
「脱走じゃないか」
「自然に返しました、ですが縁ですね」
「うちのブルと一緒になったのはか」
「はい、ではです」
「ああ、あの娘も育てるよ」
ジョンスロンはウェストンに笑顔で応えた。
「そうするな」
「そうして下さい、あの娘をお願います」
「うちの子の奥さんになったしな」
「そうして下さい」
ウェストンも笑顔で頼んだ、ジョンストンはその彼女に約束してだった。
そのうえでクロエも家族に迎えたが。
「同じみなしごでな」
「助けてもらった子達だしね」
「こうして一緒になったからな」
「私達もね」
「大事にしないとな」
「折角助かった命だし」
親がなくなったところを保護されたとだ、妻は夫に話した。
「そうだからね」
「幸せにしてやろうな」
「二匹共ね」
こう話した、そしてだった。
夫婦は二匹のウォンバットと幸せに暮らしていった、オーストラリアのある山の中での話である。この国にはこんなこともあるのだ。
ウォンバットの夫婦 完
2023・5・20
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