第3部
ルザミ
ルカの成長
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再び船旅での生活が始まってから二週間。ただ今回はシーラとナギが加わったことにより、前回より賑やかなはず……だったのだが。
「なーんか、平和だねえ……」
起床後、やや遅めの朝食を取りながら、私の向かいに座っているシーラは、ぼんやりした様子でそう呟いた。それもそのはず、船上での生活は、意識的に体を動かさないとすぐにだらけてしまうのだ。ここ二週間で変わったことと言えば、たまに襲ってくる海の魔物を相手にしたくらいで、殆ど甲板でトレーニングを行う毎日である。
そんなシーラの呟きが、洗い物をしていた料理長の耳に届いたのか、料理長はこちらを一瞥した。おそらく料理長は、シーラがこれ以上お酒を頼まないか警戒しているのだろう。
なぜなら彼女は食堂での一件以来、すっかり酒飲みの船員さんたちの間で伝説の酒豪と呼ばれているからだ。けれど彼女は料理長の心配など露知らず、呑気に料理長の作った料理を食べながら、「これって酒の肴に合うよね?」とか言って、マイペースに話を切り替えている。
ちなみにナギとユウリは今頃甲板に出て二人で釣りをしている。と言っても和気藹々とした雰囲気ではなく、お互い相手よりいい釣果を目指そうと必死に競いあっており、殺伐とした空気が流れている。
それでもユウリに勝つことに必死で、完全に私に釣りを教えることをしなくなったナギに対し、ユウリはたまに私に魚の釣り方などを教えてくれる。もしかしたら何も知らない私に対して優越感を抱いているからなのかもしれないが、もともと誰かに教えるのが嫌いではないのかもしれない。私の方も、せっかくの厚意を無下にするのも忍びないので、彼に誘われたら素直に受けるようにしている。
それはそうと、ヒックスさんの話ではそろそろ東の大陸に着いてもいい頃なのだが、未だに見つかったという情報は耳に届いていない。
カリカリに揚げたハッシュドポテトを摘まみながら、今頃ルカはどうしているのかとぼんやり考えていたときだ。
「よう。ここ空いてるか?」
いつになく暗い声でナギが声をかけて来た。声と表情から察するに、きっとまたユウリに負けてしまったのだろう。
「もしかしてまたユウリに負けたの?」
肯定の代わりに隣にある椅子を引きながら尋ねると、ナギは黙ってそこに座った。
「引き分けだ引き分け。魚の大きさならオレの方が勝ってる」
軽口を言うような振る舞いに見えるが、負けず嫌いな彼にしては声に覇気がなかった。
「ナギちん、今日は元気ないね。もしかして、寝不足?」
シーラも違和感を覚えたのか、心配そうに眉根を下げて尋ねる。するとナギは少しぎょっとした顔をして、
「なんでわかったんだ?」
と、意外な反応を見せた。私もいつもと違うナギの様子に気がつきはしたものの、寝不足という見解には至らなかったので、思わずシーラの方を見る。
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