第3部
ルザミ
ルカの成長
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」
「おれは開拓者ではなく、商人ですから。人を集めるには商売をするしか思いつかなかったんですよ」
「どういうことだ?」
「今、世界中で入国規制が敷かれてるじゃないですか。それで一番困るのは、おれたち商人なんです。他の国で売りたいのに物が売れない。逆に仕入れることも出来ない。だったら、誰もが自由に商売できる場所を提供すればいいと考えたんです」
「……なるほどな。だからあのとき、商人や冒険者に来てもらうように頼んだのか」
どうやらユウリには、ルカの意図がわかったらしい。
「以前グレッグさんに聞いてこの土地のことを調べたんですが、昔ここにあったスー族の村が滅ぼされたことで、形式上はここはエジンベア領ということになっているそうです。けど、それ以後はエジンベアは特にこの土地に干渉しているわけでもなく、いわば自治領みたいな扱いになっているんです。だったらここで自由に商売をしても問題はないんじゃないかと思って、まずは手始めに自分の店を作ったんです」
「それで、船でやって来た商人や冒険者と商売をするってことか」
「はい。それで売り上げたお金や買い取った商品を他の商人に売る。そうして集めたお金を人件費として冒険者に払い、代わりに家の建設や町に必要な設備を造ってもらう。そのためにはまず、人が訪れやすい港を作るのが大事だと思ったんですよ」
ルカの筋の通った考え方に、私は内心舌を巻いた。彼の商人気質はすでに私の予想を遥かに上回っていたのだ。
「へえ、すごいね、ルカ! そこまで考えてるなんて!!」
すると、ルカは私を侮るような目つきで鼻を鳴らした。
「まあ、アネキにはそんなこと考えもつかないと思うけどな!」
……前言撤回。やっぱりいつもの小憎らしい弟のままである。
「そうだ、せっかく来たんです、何か買っていきませんか?」
話を切り替えたルカが突然店の奥へと入るやいなや、何やら棚に乗っている袋や箱を持ち出して戻ってきた。
「何を売ってるんだ?」
「あまり大したものはないんですが、薬草とか毒消し草なんかは常備してあるんで、よければどうぞ! ちなみに、この大陸で採れた薬草は他のよりも薬効が高いので、おすすめですよ」
「本当か? 見た目はほかの薬草とほとんど変わらないぞ」
「なら一本サービスします。それにもし両方使ってみて、効果の違いが判らなければ後日返金しますので」
道具の目利きに厳しいユウリがルカ相手にも容赦なく質問をする。対するルカも慣れた様子で次々にセールストークを展開させる。さすがはドリスさんの弟子、というところだろうか。
その後もルカは、次から次へと出てくるユウリのいちゃもん……いや商談に臆することなく交渉し、ついには自分が提案した通りの金額でユウリを納得させた。
「すげえ、あのクレーマー勇者を納得させたぞ、あいつ」
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