第一部
睡蓮の悩み
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「・・・むぅ・・・・・・!」
名護屋河睡蓮は悩んでいた。十人が見れば十人ともが美少女、または美女と言うであろうその美貌を苦悩に歪めて、ただただ悩んでいた。
彼女が現在いる場所は、宮内庁の中でも、対オカルトに特化した、宮内庁心霊班のオフィスであった。しかし、数年前までは単なるお荷物扱いしかされていなかった心霊班は、霞ヶ関の端も端。寂れたオフィス街の一角に追いやられていた筈だった。・・・しかし、今彼女がいるこの場所は、霞ヶ関でも最重要な施設が多数集まる中心部分。つまり、それだけ優遇されているわけで。
「どうしてこうなってしまったのでしょう・・・。」
そして、その宮内庁心霊班が今までの冷遇状態から脱する事の出来た原因は、間違いなく彼女にあったのだ。
日本のカンピオーネの一人。名護屋河睡蓮に。
そもそも、彼女は『かんぴおーね』なるものに何の興味も無かった。成り行きに任せていたら何時の間にかそうなっていただけである。彼女は、世界を混乱させ、人々を苦しめる『悪』を懲らしめただけなのだ。結果的に『かんぴおーね』というものになってしまったが、それでも彼女は自分のあり方を崩さない。
彼女はただ、お国の為に働くのみ。そしていつの日か、彼女たち『神殺し四家』の設立目的である『ミーコの殺害』を成すのだ。
・・・と、そう考えている彼女にとって、自身がカンピオーネとなったからといって、生活を変化させる意味は何もなかった。元々、神様を殺すことが可能な程の力量を持っているのだ。『かんぴおーね』という肩書きを得たところで、今更何も変わりはしない。
元々、全ての戦いが終わった後は、また小山に引き篭るつもりであった。しかし、彼女も人の子。長い間離れ離れになっていた母親と双子の姉とは離れたくないと思っていた。そして、その彼女たちがこの人で溢れた汚れた土地を離れたくないと言うのなら、睡蓮も自分一人だけお山に引き篭る訳にもいかなくなった。なんだかんだ言って、年頃の女の子なのだ。
そして、人の世で生活するには金銭が必要である。金銭というものは、一部の例外はあれど、働かない者には決して与えられる物ではない。
・・・それが分かっていた彼女は、お国のために働くいい機会だと思って、自分の特技を活かせる上に、知り合いも働いている宮内庁心霊班に入ったのだ。
そう、彼女は働くつもりであった。意気込みは十分あったし、問題を解決する力量も十分持っていた。・・・なのに、
「何故私は働かせてもらえないのでしょうか・・・。」
そう。働かせてもらえないのだ。彼女が働こうとすると、周囲の人間が焦って止めに来る。例外なのは長谷部翔香だけだ。あの素晴らしく格好いい女性は、睡蓮のことを止めようとはしない。それどころか、睡蓮に率先し
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