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Fate/WizarDragonknight
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に近づいたころ。

___刻々帝(ザフキエル)___

「!」

 昇りかける太陽の元、それは確かに聞こえてきた。
 マシンウィンガーを止め、ハルトはぽつりと呟く。

「ザフキエル……」

 確かにそう聞こえた。
 それはつまり、見知った強敵(彼女)がすぐ近くにいるということ。

「時崎狂三……!」

 ガルーダと頷き合い、クラーケンを先導させる。
 角を曲がり、暗い道に、彼女はいた。

 時崎狂三。
 フォーリナーにして、見滝原南に潜んでいる、蒼井晶のサーヴァント。
 彼女もハルトの存在に気付き、口角を吊り上げた。

「あら? あらあらあら。こんばんはウィザード……いいえ。この場合はおはようの方がよろしいのでしょうか。きひひッ!」

 狂三は肩を震わせながら、ハルトの存在を迎え入れる。
 黒とオレンジのドレスと、両手に持つ、それぞれ異なる種類の古い銃。左右異なる長さのツインテールと、何よりも目を引くのは金色の時計盤の形をした左目だった。
 ハルトは、警戒心を隠すことができないまま、指輪に手を伸ばす。

「何でアンタがここ(見滝原)に? ……もしかして、蒼井晶も、こっちに戻って来たの?」

 ハルトの記憶が正しければ、彼女はスラム街となっている、見滝原南を根城にしていた。高速道路と大きな川を隔てたこの場所にきたのは、何か理由があるのかと邪推してしまう。
 だが、ハルトの脳裏を嘲笑うように、狂三は「きひひっ!」と独特な笑い声を上げた。

「まさか。ええ、まさか。見滝原南の参加者は人斬り以外始末しましたし、願いを叶えるために、先に他の方々に聖杯戦争から退場を願っているだけですわ」

 狂三はそう言いながら、足元に転がっている男性の襟首を掴む。

「退場を願ってるって……」
「ええ。こうして」

 男性の胸元へ銃口を突き付けた彼女は、そのままトリガーを引く。

「やめ……!」

 助けようとするが、とても間に合わない。
 ゼロ距離で打ち込まれた銃弾は、そのまま男性の心臓を貫通。
 短い悲鳴。それを最期に、男性の身体は徐々に霧状に霧散し、消えていった。
 死体が残らない。それはつまり、彼がサーヴァントだったことを意味している。

「……っ!」
「これ程度の力でしたのね……全く、いい食事にもありつけませんわね」
「アンタ……なんてことを……!」
「なんてこと? 当然ではありませんか? これは聖杯戦争。生き残る者と退場する者。参加者のわたくし達には、そのどちらかの運命しかありえませんわ」

 狂三はそう言って、その長く、古めかしい銃をハルトに向けた。

「そしてそれは当然……」

 彼女のハルトを睨む目線が冷たくなる。
 それは、殺意。


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