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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第88話 アトラハシーズ星系会戦 その4
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前にデコイの発射が確認されているから、定石通りの対応をしたのだろう。最大戦速の状況下で近距離砲戦を行うという、出力が低いとはいえ一歩間違えれば僚艦を撃ってしまう状況だ。追撃速度はガクンと落ちる。その間に第四四高速機動集団は距離を広げ予定通り跳躍宙域に入り、先頭の工作艦と補給艦から順に、前面に浮かびあがった純白の跳躍フィールドへと飛びこんでいく。

 一三〇三時。最後衛に位置していたエル=トレメンドも跳躍航行へと移行する。メインスクリーン正面一杯に映る白い円盤に飛び込む直前まで、俺は後方に無数の光点となって現れたメルカッツ艦隊を見つめていた。

「あばよ、とっつぁん」

 俺のセリフは何故かしっかりとブライトウェル嬢に聞かれていたらしく、あとであれはどういう意味ですか?と問われて説明に苦慮したのは、失敗と成功と苦難に溢れたアトラハシーズ星系会戦の最後の難関だった。

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