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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第88話 アトラハシーズ星系会戦 その4
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は揃っているから、組み合わせ次第では強力な哨戒網も築ける。あとは味方の陣形と速度、敵の進路を想定して、綺麗に機雷原を構築できるよう投射するだけだ。例えば迂回するにしても遠回りになるように。

 転生する以前の生活スタイル故なのか、どうやら地味で細かい作業に関しては適性があるらしい。低出力の電磁投射器具によって放出されていく機雷の航跡を眺めつつ、俺は思った。原作を仮に知っていたとして、どれだけの人がヤンやラインハルトのように生きられるだろうか。

 投射から三〇分後。未だに陣形再編でもたついている敵艦隊を三重に半包囲する形で機雷原が構築されたことを確認すると、機雷のセンサー網を作動させる。少なくとも三〇分という時間は敵失で稼げた。あとどれくらい稼げるだろうか。二〇〇発につき一発だけ炸薬を抜いた偵察衛星モドキの哨戒網をじっと眺めていると、混乱する敵艦隊のさらに後方に重力波の異常が僅かに感知された。

「はぁ?」
 俺の声は思っていたより大きかったらしい。捕虜が届くまで司令部の中で暇をしているモンティージャ中佐が、珈琲を片手に背中越しに俺の端末画面を見て……「んん?」っと、やはり同じような声を上げる。
「中佐、これ、もしかして」
「哨戒網の制御を俺に回してくれ。たぶん貴官の予想は合っていると思う」
 餅は餅屋。俺から制御を譲り受けた中佐は、俺の数倍の速度でキーボードを叩き、三分後に俺を呼び寄せた。
「この重力波の異常が敵艦隊なのは間違いないだろう。この星系に我々以外の友軍は存在しないのだから。だがこの速度はおかしい」
 恒星重力波の変異、機雷からの通信波異常、第四四高速機動集団の移動状況による受信偏差諸々の誤差を省いたとしても、集団としての速度が速すぎる。
「巡航艦単独編制の強行偵察分隊だと思うか?」
「いえ。違うと思います」

 こちらの総数、行動意図を承知した上で、イゼルローンから来た敵艦隊が第四四高速機動集団に後背奇襲されたことを、メルカッツは既に理解しているはずだ。であれば強行偵察を行いながら慎重に前進することは、第四四高速機動集団の逃亡を招くこと。全戦力をもって救援・追撃に向かうはずだ。しかしそれを理解した上でも速すぎる。どういう手品かはわからないが。

「メルカッツの本隊、および第八七〇九哨戒隊が遭遇したアスターテ星域防衛艦隊への増援部隊は合流し、我々を戦闘集団としては異常な速度で追撃しています。敷設した機雷原は迂回されるでしょう」
 それまでの観測データを一揃えして、爺様と参謀長にそう言って提出すると、二人は揃って溜息をついた。

「……跳躍宙点で追いつかれる可能性は?」
「半々です。我々が星系間長距離跳躍の準備に手間取れば、跳躍宙域手前で砲撃有効射程に収められます」
「手間を取らずに行けたとして、跳躍宙
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