第88話 アトラハシーズ星系会戦 その4
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た艦の乗員を集める役目もある。火力投射よりもそちらが優先される。
そして最後衛は第一部隊六五隻の戦艦と三隻の巡航艦が務める。戦艦エル=トレメンドも例外なく円錐の底辺に沿って配置されており、巡航艦によって切り開かれた敵陣をさらに拡大させる役目と乗員の回収ともう一つ。勇敢にも円錐底面に潜り込もうとする帝国艦艇を蹴散らす役目があった。
つまり最後衛ではあるが同時に最前衛である。エル=トレメンドは進行軸に対して上方頂点に位置していたから、「足元の僅かな俯角部分を除いて」すべての方角に味方がいない。集団旗艦がこんな位置にいていいのかと思わないでもないが、位置を決めたのは司令官である爺様だ。戦局が把握しやすい箇所と言えばこれ以上の場所はない。ないが、あまりにも危険に過ぎる。
巡航艦に撃破された敵艦の残骸の漂流。時折思い出したかのような散発的な砲撃があり気が抜けない。撃破された輸送艦の残骸に隠れていた身軽な駆逐艦が、エル=トレメンドの左舷前上方から突然現れた時はさすがに身の毛がよだったが、左舷下方に控えていた戦艦アラミノスが咄嗟砲撃で吹き飛ばしてくれて事なきを得た。
砲撃開始から三時間後。第四四高速機動集団は敵艦隊の左後背から突入し、右側中央部への突破に成功する。こちらが敵艦隊の覆滅を望まず進路を堅持したこと、帝国軍が既定の進路を逸脱しつつ左舷へ進路を変更したことで、帝国軍に与えた被害は想定値の七割、約一〇〇〇隻程度と思われた。こちらの被害は三〇隻に達していない。ワンサイドではあるが、敵艦隊は戦列を乱しつつも、それなりの秩序を保って行動している。
「ジュニア! 出番じゃ。仕事をせい」
想定より敵の被害が少ないことにイラついているのか、爺様の声は固くて厳しい。確かにもう少しやりようはあったかもしれないが、三〇〇〇隻以上のメルカッツ艦隊の位置が不明な以上、戦果より時間の方が優先される。とりあえずは目前で悶えている帝国艦隊が、立ち直ってもまともに追撃できないようにしなければならない。
俺の想定よりも帝国軍は秩序を維持しているが、航路を逸脱した方向が左舷であることは想定通りだ。爺様の命令を受領した俺は、司令部回線を使って戦術回路D-四を開くよう指示する。戦闘中ずっと入力し続けたプランがそこにはある。
爺様がマル・アデッタで狭い回廊に熱反応型の自動機雷を時差付けて段差配置していたことを参考としつつ、より能動的に機雷を誘導するプログラムを組んだ。恒星アトラハシーズは安定的な表層流をもつ恒星であり、太陽風は観測される限りではほぼ一定ゆえに機雷を敷設しても、突発的なフレアでもない限り機雷の設置範囲は大きくずれることはない。
機雷用のセンサーはいずれも偵察衛星や軍艦に搭載されているような長射程・高性能な物ではないが一通り
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