暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第88話 アトラハシーズ星系会戦 その4
[3/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
をつむっていたが、ゆっくりと目を開けると小さく首を振って、参謀長に応えた。

「有効射程に入ってから挑戦信号を発せ。せっかく好位置にいる以上、余計な知恵と時間を敵に与える必要はない。進路を維持。このまま接近」
「では、予定通り中距離戦闘で」
 今度の問いかけには、爺様は大きく頷いた。
「スパルタニアンの運転手達は先の戦いで苦労を掛けたからお休みじゃ。カステル! 機雷の残量はどのくらいじゃ?」
「戦闘艦艇の充足率は五〇パーセント。約八万発です」
「ジュニア! 恒星アトラハシーズの恒星風はそれほど強くはなかったな?」
「はい」
 フィッシャー先生の予習通りであるが、スイングバイに対する恒星風の影響はほとんど無視してよいレベルだ。それを踏まえた機雷戦闘を爺様は考えているわけで……
「会戦終了後、全艦全弾機雷を投射し機雷原を構築する。範囲と方法はジュニアに任せる。ただし最低三〇分以上はおもてなしができるようにせよ」
「了解しました」
 敵が一撃離脱を受けた後、どういった機動を見せるか。流石に同一方向に逃げるような真似はしないと思われるので、敵の出方をある程度は想定しておかねばならない。俺に対する教育目的もあるのだろうが、これがなかなかに面倒なことだ。

「敵艦隊より誰何信号あり」
 距離三.三光秒。有効射程まで二〇分を切った段階で、敵はこちらに所属を問う通信を打ってきた。当然こちらはが通信妨害状態を装って無視する。
「遅いな」
 嘲笑に近い声でモンティージャ中佐が呟いた。確かに遅いが、こちらを味方と勘違いしていた可能性を考えれば、まだ有効射程範囲前に誰何信号を発せただけましだ。進行方向に敵がいるという状況でないからというのもあるだろうが、七年後このアスターテ星域で有効射程に入るまで後背にいる一大戦力が、敵だと気が付かない制式艦隊もあったのだ。
 もしかしたら原作に書かれていないだけで、俺の想像を超えるような探知妨害があって気が付かなかったというのもあり得るだろう。だが少なくとも現時点では原作アニメにおける第六艦隊より柔軟な思考力と行動力がある敵だとみていい。

「敵艦隊、速度を上昇。会敵予想時刻修正 〇二四〇。プラス〇〇〇五」
「艦種確認。戦艦二八〇ないし三〇〇、巡航艦一二〇〇ないし一三〇〇、駆逐艦約一〇〇〇、宇宙母艦一〇ないし一五。ほか補助艦艇らしきもの三〇〇」
「ジャミングを開始します。以降、通信距離は低下します」

 数的には不利ではある。敵の戦闘艦艇は最大見積で二六一五隻。こちらは一九七〇隻。だが敵も要塞であるイゼルローンから出てきた部隊にしては戦艦が少なく、駆逐艦が多い。そして宇宙母艦がかなり少ない。もちろんメルカッツの直轄艦隊が重装備すぎるのであって、こちらが標準的な艦隊編成であるとは言えるのかもしれない。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ