第88話 アトラハシーズ星系会戦 その4
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
佐の行動は実にらしくないものばかり。こういう僅かなりとも闇を感じさせるような会話などなかったはずだ。そういうときは直接直球で聞くに限る。俺の反撃に、モンティージャ中佐の目が糸のように細くなった。
「こういう部隊にいると過剰に出世が遅れるし、扱き使われて命の危険も高い。それでも貴官はいいのか?」
「モンティージャ中佐から出世という言葉が出てくるのは意外ですね」
「シトレだろうとロボスだろうと、宇宙艦隊司令部はビュコック『中将』を定年まで使い潰す気だ。七年後。貴官が三二歳の時、よくて准将になっているかどうか」
「かもしれませんね」
「貴官が戦闘指揮官を目指すにしろ内勤幹部を目指すにしろ、この戦いが終わったら転属願を出した方がいい。大した忠告ではないが気に留めといてくれ」
ポンと俺の方を叩くと、モンティージャ中佐は俺の隣の席に座る。単なる親切心か、それとも何かの罠か。情報部の人間にマークされるほどには悪いことをしているつもりはないが、ケリムとマーロヴィアで情報将校の奥深さを味わっているだけに、軽々には判断できない。
だがそんなことを気に留めるまでもなく、戦いは目の前に迫ってくる。〇二〇五時。第四四高速機動集団は帝国軍増援艦隊を、前方索敵範囲に収めることに運よくかろうじて成功した。
「敵艦隊中央部、当艦隊の進行軸に対し〇〇二五時、仰角五.四度、距離六.七光秒に確認」
「敵は右舷より左舷に向けて鋭角四四度をもって進行中。速力は帝国軍基準巡航速度」
「艦艇数二七〇〇隻ないし二八〇〇隻。台形陣を形成」
「現在の速力差を鑑み、機動集団基準有効射程まで三〇分」
相対していれば六.七光秒という距離は有効射程距離まで一〇分もかからない。だが敵味方双方がほぼ同じ方向を向いている以上、有効射程までの時間は双方の速度差だけが要因となる。
「挑戦信号を発しますか?」
オペレーターたちの報告に、モンシャルマン参謀長が腰を曲げて司令席に座る爺様に問いかけた。
三〇分という時間は、熟達した戦闘集団であれば反転して陣形を整える時間としてはまずまずというところ。それがわからないモンシャルマン参謀長ではないので、挑戦信号を打つことによってこちらが敵であると認識させ、敢えて敵を反転させ、その隙に距離を一気に縮めて一撃離脱。敵が再反転して追撃に移る前に、戦闘宙域を離脱するという考えだろう。さらに敵が熟達していない部隊であれば、有効射程時点で反転機動中となりこちらとしてはやりたい放題となる。
だが挑戦信号を打った段階でこちらが敵と明確に認識されるわけで、敵司令部に十分な思考時間を与えることになる。既にメルカッツの部隊とは連絡を取っているはずで、反転以外の戦術をとる可能性は極めて高くなる。
問いかけられてからしばらく爺様は目
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ