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第三十六話 戻ってきた現実、されど・・・
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焔の引き技を体を逸らすことでやり過ごす桜火。

「あまいわよっ!」

しかし、その避けた先にもう一本の刀が横薙に振るわれる。桜火や焔の納めている剣術流派「陰陽月影流二刀剣術」とは、その名の通り二刀を扱う流派なのである。なので、たとえ一撃目を避けたとしてもすぐさま二撃目が襲い掛かってくる。

「読んでましたよ!」

それを刀で受け流し、そのまま刀身を沿ってカウンターを仕掛けていく。対して焔も一撃目の刀で桜火を斬りにかかる。このままいけばどちらかの、あるいは両方の刃が相手の命を奪うが、それを遮るものがいた。

「そこまでっ!」

威厳のある言葉が道場全体に響き渡る。振るっていた刃を止め(双方とも首筋を斬りつける一歩手前)桜火と焔は手を止めると少しの間をおいて刀を鞘に納めた。

「・・・もう少しやらせてくれてもいい気がするのだけど?」

「右に同じだ、御当主」

若干不満が残るようで打ち合いを止めた人物の方へと非難の目を向ける二人、ソレイユの姉である月影焔とソレイユこと月影桜火だったが、その視線を向けられた「陰陽月影流二刀剣術」当主である月影 泰全(たいぜん)は呆れたように道場の入り口の方を指をさしながら言った。

「焔、桜火・・・時間を見てそういうことは言うんだな・・・」

指をさされた入り口には一人の女性が立っていた。全員の注目が集まる中、その女性は何事もなくたった一言だけで伝えた。

「朝食の用意ができました」



「打ち合ってるときにも言ったけど、だいぶ戻ってきたみたいね」

「自分的にはまだまだなんですけど・・・」

道場とは違った場所で朝食をつつく桜火たち。桜火と焔は師範代の席に腰を落としている。

「しかし、前より技のキレが良くなってる気がしますが・・・」

話しに入ってきたのは同じ師範代の席に座る男だった。名を月影 水霊(みずち)。桜火の従兄にして泰全の息子である。

「ああ、それなんだけど・・・たしか、仮想世界が現実世界に及ぼす影響ってやつだと思うぞ」

「仮想世界が、ですか?」

「ああ、これは親父の受け売りなんだが・・・仮想世界で学んだことがある程度現実世界にも還元されるとかなんとか」

お新香を咀嚼しながら水霊の疑問に答えていく桜火。

「筋力が上がるとか足が速くなるとかそういったもの類が還元されるわけではなく、向こうで学んできた経験が還元されるらしいぞ」

「なるほど、それなら納得です」

SAOに囚われていたのが二年間。その毎日を剣を振っていたのだ。その経験が現実世界の桜火の体に還元され技のキレが上がったと水霊は感じたのだろう。しかし、二年間も寝たきりだったので当然ながら筋力は落ちていて、目覚めた当初は刀を持つことはおろか歩
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