七十一 正体
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んだ。
「ええっと…月光、ハヤテさん?」
眼の下の隈が酷い顔。生気をあまり感じられない顔がイルカを見る。
五代目火影と中忍試験で使う巻物について話してから、行方知れずになっていた相手。
火影邸で貼り紙がしてあった捜し人。
その人間の名を恐々と呼んだイルカへ、月光ハヤテは穏やかに微笑んだ。
「やあ、イルカ先生。どうしました?」
一見、何もなさそうだ。
要注意人物だとは思えないほどの落ち着いた風情で、笑っている。
だからこそ一瞬気を許してしまったイルカは「あの…綱手様が捜してますよ」と当たり障りのない言葉を掛続けた。
「そうですか」
「そうですよ」
それきり黙り込んでしまう。
火影邸へ向かおうとも、それどころか微塵もこの場から動こうとしない月光ハヤテをイルカは訝しげに見つめた。
親しい間柄ではないので、なんと声を掛けたらよいのか気まずく思いながら、けれど沈黙に耐え切れず再び促す。
「……あの、…行かないんですか?」
「行ったらバレてしまいますからね」
「…な、なにが」
しばらく睨み合うようにして、当たり障りのない押し問答を続ける。
やがて月光ハヤテは、首を傾げておかしそうに、しかしながら呆れたように肩を竦めた。
「………まだ気づかないかな?」
口調が一変する。
けれど姿かたちは月光ハヤテそのもので、イルカは益々困惑顔を浮かべた。
「この場所、懐かしいだろう?」
ハヤテは、月光ハヤテであるはずの相手はくるり、とその場で回ってみせた。
おおげさなくらいの芝居がかった身振りで。
果たして月光ハヤテという忍びは、こんな人間だったろうか。
もっと生真面目で、こんな冗談めいた行動は取らないはずだが。
「……どうして此処を知ってるんです?」
「この場所を最初に教えたのは俺だよ。当然じゃないか」
どうして月光ハヤテがこの場所を知っている?
ナルが“多重影分身”を習得した時、あの場には誰がいた?
イルカとナルと、そして……────
「つれないなぁ、イルカ先生」
“多重影分身”の術が施された巻物。
アレをナルに盗ませた疑惑を被せて、この場所でナルが里人に忌み嫌われている理由を教えた。
九尾の狐だとバラし、ナルに返り討ちにされた。
「同じアカデミーで教鞭を振るった仲だというのに」
違和感は最初からあった。
恋人である卯月夕顔と別れたという噂を聞いた。
なにより、あれだけ咳をしていたのに、今ではすっかり喘息をしなくなった。
「貴方…いや、おまえは…」
同じアカデミー教師であり、イルカの昔馴染みだった…──。
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