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渦巻く滄海 紅き空 【下】
七十一 正体
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治す人材としては悪くない選択である。

つまり大蛇丸は、このまま音隠れの里で置き去りにされると殺される彼女の運命を見越して、アマルを連れて行ったのだ。
大蛇丸の考えを読んで、カブトは内心舌を巻いた。




そもそも最初、カブトは長門を助けるつもりはなかった。
ナルトの指示がなければ、大蛇丸の蛇が長門を狙っているとわかっていても、すぐに助けようとしなかった。長門を噛もうとしていた蛇が猛毒の牙があると知っていたからだ。

ただでさえ術やチャクラの使い過ぎで衰弱している長門が、蛇の毒で更に弱まり、やがて死に至るとわかっていながら、ナルトのもとへ戻れるのならいっそ死んでくれたほうが良いとさえ考えていた。

しかしながらナルトに報告したところ、長門を助けろという命令が下った。
その命令に従い長門を助けたカブトは、自分の保身の為に申し出る。


「遺体のストックならあります。大蛇丸様…いえ大蛇丸のアジトでいくつか取り扱っていたものですから」

カブトはにこり、と愛想笑いをしてみせた。
自分が如何に利用価値があるかを此処で示さなければいけない。

生き残って、本当の主であるナルトのもとへ戻る為に。


「木ノ葉へ向かうのは、それからでも遅くないのでは?」


そしてナルトの指示があるまでに、ペイン六道が木ノ葉を襲撃するまでの時間稼ぎをする為に。































面識はない。

前回の木ノ葉の中忍試験の試験官だとは知っているが、それほど親しい仲でもない。
挨拶くらいはしたかもしれないが。


自分は何をしているんだろう。
何故、尾行しているのだろう。


けれど見過ごせなかった。
誰も気づいていないのなら教師である前に忍びである自分が動かないと。
なにより、本当に彼が要注意人物ならば、アカデミーの生徒に危険が及ぶかもしれない。

追い駆ける。
尾行した先は見覚えのある懐かしい場所だった。




大きな樹木に囲まれた森の奥。
小屋がある此処は、自分にとっても波風ナルにとっても大切なところだ。


初めてナルが“多重影分身”の術を披露した場所であり、初めてイルカがナルに認めてもらい、イルカもナルとまっすぐに向き合った。
そうして初めてイルカがアカデミーの卒業祝いに自分の額当てをあげた場所でもある。

懐かしさに浸ってしまっていたイルカは、ハッ、と我に返った。



尾行していた相手がじっと此方を見ている。
最初から気づいていたのか、とイルカは身構えた。
この場所へ誘導されたのだと今更理解したが、気を取り直してイルカは取り繕うようにして相手の名を呼
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