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好色な神でさえも
第三章
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「義理でもな」
「自分の子供はないわね」
「わしだってせぬぞ」
 そうした間柄の相手に言い寄り手を出すことはというのだ。
「だからな」
「私もなのね」
「そこは弁えるのだ、それにどうだ」
 ゼウスはキュベレーにあらためて言った、今度は問うた。
「今のアッティスを見てな」
「我が息子を」
「そうだ、どうだ」
 実際に自分からアッティスを見つつキュベレーに見る様に促した。想い人と共にいて満面の笑顔の彼を。
「今のあの者は」
「とても幸せそうね」
「その姿を見てどう思う」
「これからも幸あれとね」
「思うな」
「ええ」 
 ゼウスに我が子を見つつ答えた。
「本当にね」
「そう思うならな」
「これからもなのね」
「そうだ、親としてな」 
 その立場でというのだ。
「幸せを祈るのだ」
「そうして愛することね」
「そうだ、いいな」
「それが親の愛ね」
「そういうことだ、だが我が子が巣立って寂しいだろう」
 ゼウスはキュベレーを窘めた後でこうも言った。
「わしから贈りものがある」
「愛でる子かしら」
「今のお主には毒だ、身体も心も貪り尽くすであろう」
 だからだと言うのだった。
「それはない」
「そうなのね」
「アカマツの木だ」 
 贈るものはそれだというのだ。
「それだ」
「その木は」
「そなたがアッティスを拾った時だ」
「あの子はアカマツの木の下にいたわ」
「だからその木を見てな」 
 ゼウスが贈ったアカマツの木をというのだ。
「アッティすを想え、いいな」
「そうすることね」
「これからはな、いいな」
「わかったわ」
 キュベレーはゼウスのその言葉に頷いて応えた。
「それではね」
「そういうことでな」
「あの子を親として愛するわ」
「そうせよ」
 ゼウスはここでは優しい声で話した、そうしてだった。
 女神に式の後で実際にアカマツの木を贈った、すると女神は常にアカマツを見て愛情を注ぎその木をとても大事にする様になった。
 ゼウスはオリンポスでその話を聞いて言った。
「これでいい」
「そうだな、流石に我が子を恋人として見るのはな」
「それは駄目だ」
 ポセイドンとハーデスもその通りだと頷いた。
「幾ら我等でもだ」
「それだけはない」
「だからキュベレーについてもだ」
「あれでいい」
「そうだ、わしですら駄目と思ったからあの様にしたが」
 兄弟神達にだ、ゼウスはこの場でも話した。
「よかったな」
「実にな」
「これ以上はないまでにな」
「そうだな、ではアッティスと彼の妻の幸せを願い」
「キュベレーについてもな」
「そうしていこう」
「誰もが幸せになった」
 ゼウスは満足そうに笑って言った。
「実によかった、では我等もだ」

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