第二章
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「もうね」
「女子高生なの」
「二次大戦を二十代で経験したなんて」
それこそというのだ。
「誰も思わないから」
「あの時うちの人呉にいてね」
「海軍で働いていたのよね、ひいひい祖父さん」
「そうだったのよ」
「そのひいひい祖父ちゃん百五歳でね」
「夫婦で百歳超えてるのっていいわね」
「流石に最近殆ど外出してないわね」
そうなったというのだ。
「それもね」
「当然なのね」
「百歳超えたら」
それこそというのだ。
「普通はよ」
「うちの人みたいになの」
「なるわよ、というかね」
三奈美は夏実にどうかという顔で羊羹を食べつつ言った、見れば夏実は食欲も全く衰えるところがない。
「何でそんなに若作りなのよ」
「そう言われても」
「わからないの?」
「私若作りかしら」
「かなりね」
実際にといううのだ。
「いつも言ってるけれど」
「そうなの」
「そう、それが何故か」
「そうは言われてもね、別にね」
「何もないの」
「私はただ普通にね」
もう普段着に戻っている、女子高生の様なセーターとミニスカート姿で話す。
「暮らしているだけよ」
「てっきり人魚の肉食べたとかね」
「そんなことないわよ」
「けれどそう思う位によ」
そこまでというのだ。
「ひいひいお祖母ちゃんはね」
「若作りなの」
「そうよ、だから言うのよ」
「私にそう言われてもわからないわよ」
「けれど私だけじゃなくてね」
やしゃ孫である自分だけでなくというのだ。
「ひいひいお祖母ちゃん知ってたらね」
「そう言うの」
「百一歳にはね」
それこそというのだ。
「絶対に見えないから」
「女子高生に見えないの」
「大正生まれにはね」
兎角だ、三奈美は夏実にいつもこうしたことを言っていた。
それでだ、ある日若い頃の写真とは別人の様に好々爺の姿になっている夏実の夫である龍之介にだ、三奈美は彼女のことを問うたのだった。
「あの、ひいひいお祖母ちゃんってね」
「婆さんがどうしたんだ?」
「そのお婆ちゃんによ」
「見えないの」
「女子高生にしか見えないからよ」
だからだというのだ。
「そのことをね」
「どうしてか、か」
「ひいひいお祖父ちゃんに聞きたいけれど」
「そのことか」
龍之介はその話かという顔になって応えた。
「何でもな」
「何でも?」
「わしが好きだかららしいな」
「ひいひいお祖父ちゃんを?」
「わし等はお互い十代で結婚してな」
「相思相愛だったのよね」
「ああ、もう婆さんがな」
夏実の方がというのだ。
「わしに夢中になってな」
「それで結婚したの」
「それでな」
やしゃ孫にさらに話した。
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