第3部
ルザミ
新たな船出
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ーブルを囲うようにして船員さんたちが集まっている。
「一体この人だかりはなんなの?」
私が尋ねると、シーラは答える代わりに大量のゴールドが入った袋を取り出した。
「ふっふっふ。まあ見ててよ」
よく見ると、テーブルにはお金の他に大量の酒瓶が並んでいる。そしてテーブルを挟んだシーラの向かい側には一人の船員さんが赤い顔をして酒瓶を手にしていた。
「くそっ、もう一杯だ!」
その一声に、二人を囲う人たちは歓声を上げた。それが合図かのように、厨房にいた料理長が渋々酒を出してくる。
「これで最後にしてくれよ。もうあらかた飲んだんだからな」
料理長のその言葉に、私は耳を疑った。確か出航前に、船員さんたちが皆飲むからと、大量に積んだと聞いた。それがもうなくなりそうだというのか。
「……嫌な予感しかしない」
ぼそりと、暗い顔をしながらユウリが呟いた。珍しく彼の意見に同意する。
「オッケ〜! じゃあ、あたしはもう二瓶追加ね♪」
対するシーラは相手より一瓶多く注文すると、ゴールドの入った袋ごとテーブルの中央に差し出した。
「すげえ!! あの酒豪のジンの上を行くなんて!!」
「てかその前に三人抜きしてたろ、あの子。やっぱり勇者さんの仲間はただもんじゃねえな」
「さっきから全て自分に賭けてやがる……。どんだけ自信があるんだ?」
ざわざわと、次々にシーラに対する驚嘆の声が聞こえてくる。中には彼女の方にお金を動かす人もいた。その声が増える度に、シーラの笑みが深くなる。
「よーし! んじゃ、勝負!!」
シーラの声を合図に、二人は同時に酒を煽り始めた。苦しそうに酒を飲む船員さん(確か酒豪のジンとか言ってたっけ)に対し、シーラは余裕綽々の表情であっという間に一瓶を飲みきった。そして、ジンさんが酒を半分ほど残してテーブルに置いた瞬間、割れんばかりの歓声が沸き起こった。
「うおおおおお!! やりやがった!!」
「あのジンを倒したぞ!!」
「可愛い顔してとんでもない酒豪だな!!」
もはや食堂では、一人の英雄が誕生したと言っても過言ではないくらいの盛り上がりを見せている。そんな熱狂的な様子を、私とユウリは蚊帳の外で眺めていた。
「あのザル女……俺より目立ちやがって……」
突っ込むところそこなの!? 思わず私はユウリの方を振り返る。すると彼はシーラの前までやってきて厳しい口調でこう言った。
「おいこらザル女!! 調子に乗るのもいい加減にしろ!!」
「え〜? せっかくいっぱいお金も手に入ったのに?」
「……!!」
ユウリはシーラの手元にある、溢れんばかりの金貨袋を凝視する。そして、小さく咳払いをすると、
「……まあ、今回だけは見逃してやる。だが、あまり料理長に迷惑をかけるな」
そう言ってひらりとマントを翻すと、料理長がいるカ
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