第3部
ルザミ
新たな船出
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に振る。すると糸は、私のときとは比べ物にならないくらい遠くまで飛んで行った。
「うわぁ、すごーい!」
ナギと釣竿の間に挟まれながら、私は素直に感嘆の声を上げる。
「これでもナジミの塔を抜け出して、近くの海でしょっちゅう釣りしてたからな」
自慢げに言うと、ほどなく竿の先が僅かに動いた。その瞬間、ナギは慎重かつ大胆に、竿を器用に動かす。その間私はナギにされるがまま、ずっと竿を握りしめていた。
「よし、あと少しだ! 引っ張るぞ!」
「う、うん!」
その合図に、私とナギは息を合わせ、渾身の力で竿を引き上げた。ザバッ!! という派手な水しぶきとともに現れたのは、私の顔ほどもある大きな魚だった。
「うわあ、美味しそう!!」
「お前……、初めて釣れた魚を見たときの第一声がそれかよ……」
どうやらナギが求めていた感想はこれじゃないらしい。
「ふん、貸してみろ」
すると、一部始終を見ていたユウリがひょいと竿を取り上げた。そして、置いてあった餌箱から餌を取り出し素早く釣り針に刺すと、ナギとは違う投げ方で竿を振った。けれどその動作は、ナギと同様に手慣れた様子に見える。釣糸が沈むのを確認すると、ユウリは小刻みに竿を動かし、かと思えばピタリと止めた。そうしてしばらく同じことをしていると、急に竿の先が激しく揺れたではないか。
ユウリは今だとばかりに竿を大きく引いた。だが、魚も負けてられない。お互い引っ張る力を最大限に発揮し長期戦へともつれ込んだが、苦闘の末、魚は諦めたのか、最後はほぼ無抵抗でユウリに釣り上げられた。
「うわっ、ナギのより大きい!!」
ユウリが釣り上げた魚は、ナギのと同じ種類の魚のようだが、一回りほど大きかった。
「この時間帯なら、これくらい釣れて当然だろ」
そう言うと、ユウリはこれ見よがしにナギに釣った魚を目の前にぶら下げた。
「けっ!! 今のは本気出してなかったからな。オレの実力はこんなもんじゃねーんだよ!!」
ユウリの釣果に触発されたナギは竿を奪い取ると、私のことなどそっちのけで再び釣りを始めてしまった。
「……えーと、私はどうしたらいいんだろ」
「知らん。とりあえず俺は腹が減ったから食堂に行く」
あれだけ焚き付けたにも拘らず、ユウリは釣りに夢中になっているナギに背を向け、すたすたと行ってしまった。
うーん、ナギ一人にして、大丈夫かな?
なんて考えていると、ちょうどタイミングよく私のお腹が鳴った。
「私も食堂に行こうっと」
そう判断すると、私は早々とユウリのあとを追いかけたのだった。
ユウリと二人で食堂にやって来ると、なぜか中央に人だかりが出来ていた。
「あっ、二人とも! こっちこっち!!」
その中心から顔を出したシーラが手招きしているので近づいてみると、彼女が座るテ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ