第3部
ルザミ
新たな船出
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色に大はしゃぎで、私も一緒になって海を眺めていた。対するナギは、水面に浮かぶ魚影を、ずっと険しい顔をして眺めている。
「どうしたの? ナギ。ずっと海とにらめっこなんかして」
私が尋ねると、ナギは顔を上げて真剣な顔でこう言った。
「なあミオ。あの魚、どうやったら釣れると思う?」
「ん??」
「あの深さだと、海水温があんまり高くないだろうから、魚も餌に食いつきにくいだろ? てことは、餌の種類を変えるか疑似餌を作って様子を見るか……」
「……ごめんナギ、私釣りのことはよくわからないんだけど……」
するとナギは、信じられないといった様子で私の肩をガシッと掴んだ。
「お前、オレたちがいない間ずっと船で移動してたんだろ!? ずっと目の前に海があったんだろ!? それなのにお前、全然釣りしてなかったのか!?」
「いや、だって、魔物とかの襲撃に備えてたし……。それに魚なら、船員さんが時々釣ってくれてるから……」
「バカヤロー!! せっかく釣りができる環境にあるのに、なんてもったいない!!」
なんで普通に船に乗っていただけで、バカ呼ばわりされなきゃならないんだろう。私は白い目でナギを見返す。
「よし、今からお前に釣りの楽しさを伝授してやる!! お前はこれから俺の弟子だ!!」
「ちょっと!? 勝手に決めないでよ!」
私は抗議したはずだったのだが、なぜかナギに無理矢理釣りのイロハを叩き込まれることになった。こっちは別に乗り気ではないのだが、あまりにもナギが生き生きとしていたので断ることも出来ない。こういう時にはっきり言えない自分を悔やんでしまう。
「あらら……。ならあたしは食堂に行ってるね」
「えっ!? シーラ!?」
シーラが逃げるように去っていくのを目で追いながら、私は目の前の状況にため息を洩らすしかなかった。
「なんだお前ら、まだ外にいたのか」
オレンジ色の太陽が西の空に傾きかけた頃、半日ぶりに顔を見せたユウリが私たちのところにやってきた。ちょうど私は船員さんに借りた釣り竿を使い、竿の振り方をナギに教わっているところだ。ちなみにシーラは食堂に行ったきり、ずっと姿を見せていない。
「何言ってんだ、これからが本番なんだよ。よしミオ、今から沖の方に向かって竿振ってみろ」
「え、えーと、こう?」
ナギの指示通り、私は持っていた竿を適当に振り下ろす。すると竿についていた釣り糸が弧を描き、すぐ近くでポチャン、と水音がした。
「あーもう、ダメダメ! そんなんじゃ魚なんて食いつかねえだろーが!」
堪りかねたナギが、後ろから私を抱き留めるようにして、竿を握りしめる。そして彼の動きに促されるまま竿を振り上げると、釣糸を回収した。
「いいか?離すなよ。竿はこうやって振るんだ!」
そう言ってナギは、慣れた手つきで竿を豪快
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