第一章
[2]次話
要望が多かったので
市議会議員の泊里英の掲げる政策は上下水道のことでありそちらの行政で市に貢献していた、だが。
最近片親のフォローも言い出す様になった、市の有権者達は彼のホームページや選挙での演説を聞いておや、と思った。
「あれっ、泊里さっていったら水道だろ」
「いつも言ってるよな」
「いい飲み水の確保が大事だって」
「あと下水道のさらなる充実だってな」
「元々水道局で働いてたしな」
「それでそっちの人だろ」
「それがどうしてなんだ?」
彼の政策にそうしたことが含まれて思うのだった。
「不思議だな」
「またこれはどうしてなんだ」
「急にこんなことも言い出すとか」
「これまで全く言わなかったのにな」
「教育とか堤防とか橋も言ってたけれどな」
それでもというのだ。
「片親のフォローとかな」
「あの人が言うとかな」
「どうもピンとこないな」
「そうだよな」
彼のこれまでの主張になかったからだ、それでだ。
市の者達は首を傾げさせた、だが。
「いいことだよな」
「ああ、片親だと何かと苦労することもあるしな」
「色々な事情でそうなった家庭があって」
「忙しかったりお金がなかったり」
「余裕がないことも多いし」
「フォローされるなら」
「それに越したことはないな」
こう言って泊里の政策をよしとした、だが。
彼の妻の七海一五一位の背で黒い髪の毛を長く伸ばして後ろで束ねた卵型の顔で丸い目とそうした感じの唇に太い長めの眉を持つ彼女は夫に尋ねた。
「私もあなたが急に片親のフォローを言い出してね」
「ああ、そのことだね」
泊里は自宅で応えた、自宅は普通の一軒家である。黒い髪の毛を首の付け根の長さで切り揃え四角い眼鏡をかけた面長の顔に鋭い目をした背の高い痩せた初老の男で妻より何歳か年上の感じだ。
「実は最近まで全くなんだ」
「あなたも考えていなかったの」
「僕の専門はあくまで水道で」
「堤防とか橋よね」
「それと教育だね」
「幼稚園のこととかね」
「この街に大学まで通っていたからね」
それでというのだ。
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