第三章
[8]前話
「言われ続けるわ」
「それ嫌よね」
「正直不幸だしね、こんなことはね」
絶対にというのだった。
「起こって欲しくなかったけれど」
「起こったし」
「ネタとしてね」
「残るのね」
「そうなるわ」
こう言うのだった。
「笑われてネタとして扱われるわ」
「不幸なのに」
「ネタとして凄過ぎるから」
それ故にというのだ。
「ずっと言われるわよ」
「まあね、傍から見てもね」
愛理も否定せずに言った。
「今年のシリーズは壮絶過ぎたわね」
「一方的過ぎてね」
「こんなシリーズこれまでなかったし」
一方的な展開はあってもというのだ。
「後にもね」
「そうはないわよね」
「もう二度と出ないかも」
「そこまでだったから」
茉祐はその目を座らせて言った。
「これからもね」
「言われ続けるのね」
「伝説になるわね」
愛理もこう言った。
「やっぱりね」
「そうよね、愛理は笑わなくても」
「世間ではネタになるのね」
「特に私達阪神ファンがね」
他ならぬ彼等がというのだ。
「自嘲してね」
「ネタにするのね」
「そうなると思うわ、本当に今シーズン最後の最後でね」
「大ネタね」
「それが来たわ、今度日本一になるのは何時かしら」
「前は一九八五年だったわね」
「昭和よ、平成の間なれるかしら」
日本一、それにというのだ。
「果たして」
「なって欲しいわよね、茉祐としては」
「やっぱりね、けれどどうかしらね」
少し落ち着いて言った、だがこの日茉祐が飲んだ酒の量はかなりのもので翌日彼女は二日酔いで傷む頭で出勤した。
彼女が言った通りこのシリーズは伝説になった、だが愛理は笑わなかった、笑うには彼女にとってはあまりにも不幸なことだったので。だが茉祐は時々自嘲で言った。
不幸過ぎて笑えない 完
2023・4・25
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