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剣の丘に花は咲く 
第五章 トリスタニアの休日
第七話 狐狩り
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 夜が明け、時が立ち、中央広場にサン・レミの聖堂の鐘が十一回鳴らされ、十一時が知らせる中、劇場の前に立つ二つの影がある。それはルイズとアニエスだった。二人は先程まで劇場近くの路地で隠れていたのだが、一台の馬車から降りた男が劇場の中に入るのを確認したアニエスが路地から出てきたのだ。
 厳しい顔で劇場を見つめるアニエスをルイズが睨めつけるような視線で見上げている。

「で、結局教えてくれないのね?」
「……」
「……キスするわよ」
「ひっ?!」
「……冗談よ」

 ポツリとルイズが呟いた言葉に、自分の身体を抱きながら可愛らしい悲鳴を上げて飛び上がるアニエス。そんな様子に小さく笑みを浮かべたルイズが顔を逸らすと、遠くからやってくる男女が目に入る。

「姫さまに…………シロウ」

 士郎は店の中での執事服ではなく、最初に買った平民が着るような粗末な服を着ている。その隣のアンリエッタは見覚えがある平民の服を着込み、さらに髪型が変わっている。二人はまるで恋人のようにピタリと寄り添いながらこちらに向かってきている。

「おはようルイズ……って。何か機嫌悪そうだな?」

 ルイズの傍まで歩いてきた士郎が口元をへの字にするルイズに苦笑いを向けると、ルイズは士郎の足を踏みながら傍らに立つアンリエッタに笑い掛けた。

「姫さま心配しましたよ。一体どうしたんですか……というより何故シロウと?」
「ごめんなさいルイズ。どうしてもシロウさんが必要でしたので。黙って借りてしまいました」
「シロウの……ですか……。はぁ……で、シロウはお役に立ちましたか?」

 ギリギリと士郎の足を踏む力を更に強めながら、士郎を見上げるルイズ。士郎は脂汗を浮かせながらも痛みを我慢している。
 アンリエッタはそんな二人の様子に気付かず、赤く染めた頬を両手で挟みながら士郎を見上げ、

「は、はい……色々と……本当に色々と力になって下さいました」
「……そ〜ですか……色々、ねぇ」
「何だルイズ」
「別に……どうもしないわよ」

 士郎の脇腹をつねりながら会話するルイズたちを脇に、アンリエッタは目の前で膝をつくアニエスに声を掛けた。

「用意は出来ていますか?」
「はっ。用意は既に整ってございます」
「わかりました……それでは」

 アニエスの言葉に頷くと、アニエスは背後を振り返る。
 そして、そこに立つ者たちに向かって声を掛けた。

「あなた達にはこのタニアリージュ・ロワイヤル座を包囲してください」

 背後を振り返ったアンリエッタの目の前には、マンティコアから降り立ったマンティコア隊を中核とする魔法衛士隊の隊長が立っていた。
 隊長はアンリエッタと跪くアニエスを交互に見ながら戸惑いの抜けない顔で頷く。

「は、ハッ。りょ、
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