暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
異世界の聖杯戦争
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ヴァントが身近にいないのはあまり見ないがな」
「……俺に願いなんてない」

 ハルトは声を荒げた。

「願いなんてない。俺はただ、この戦いを止めたいだけだよ」
「本当にそうか? 本当はお前も、聖杯に叶えて欲しい願いがあるんじゃないのか?」
「無いよ。そんなもの……」

 いい切るハルト。
 だが、士は笑みを浮かべたまま、大空を仰いだ。

「お前……見返りもなしに、こんな戦いを止めるとか言っているのか?」
「そうだよ。俺は人を守るために魔法使いになったんだ。誰かを傷付けてまで叶えたい願いなんてない」
「……かつて。聖杯戦争に参加した男がいた」
「……?」

 士は、どことなく懐かしそうな顔を浮かべた。

「そいつにも、願いはいらないと言っていたな。実際、奴は異常なまでに他人に手を差し伸べていた。それこそ、聖杯戦争の最中であろうとな。お前は……そこまで、壊れた異常者か?」
「……何が言いたいの?」
「ここの聖杯の詳細は知らないが……お前も、願ったんだろ? 聖杯に……お前の願いを。聖杯に……何かの願いを代償にした戦いに参加する奴は、ほぼどいつもこいつも他の奴の命を顧みない奴ばかりだ」
「……アンタは、ここ以外の聖杯戦争も、知っているの?」
「ああ」

 あっけなく。当然のように。
 士は答えた。
 懐のポケットに手を伸ばし、それを取り出した。
 それは、士がこれまで訪れた世界で、彼が撮影した写真だろう。どれもこれもピンボケしており、どこかの一瞬を写真に切り取ったものではない。どちらかというと、それぞれの箇所で撮影した写真の一部一部を切り分けて合成したもののうようにも思える。

「他のところも……そうだな。中々に過酷だったな」
「……」

 束の一枚目。青い女性の西洋騎士を中心に、合計七人の参加者___おそらくサーヴァントが、別々の方向へそれぞれの武器を向けている。煌めく涙が星になるような美しい一枚絵に、ハルトは一瞬息を呑んだ。
 二枚目。二人の幼い少女が、七枚の舞うカードの中で、必死の表情で何かを求めている。二人の少女の内一人___黒髪の少女は、どことなく泣いているようにも見える。
 そのほかにも、士が写真の束をめくるたびに、また新しい聖杯戦争が姿を見せては、また入れ替わっていく。

「これが全部……聖杯戦争なのか……!」
「ああ。全て、別の世界のな」

 江戸時代らしきものの他にも、まだまだ聖杯戦争の写真は残っている。
 だが士は、その束を懐に収納し直した。

「アンタは……聖杯戦争のことを、どこまで……?」
「久しぶりだな。魔法使い」

 その粗暴な声に、ハルトは口を閉じた。
 突然割り込んできた声。
 無精ひげを生やした男性。もう春ですっかり暖かくなったというのに
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ