第2部
第2部 閑話
ランシールでの一夜
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なんて、関係ないと思うけど」
「……」
いつも他人の目など気にしなさそうなユウリがそんなことを言うなんて、珍しかった。私の率直な意見にも、彼はあまり納得していないようだ。
「私はユウリとこうして一緒にお店を回れて、すごく楽しいよ?」
「!!」
思ったことをそのまま言っただけなのに、何故か意外そうに目を剥くユウリ。私はさらに言葉を続ける。
「そんなこと気にするくらいなら、お祭りをもっと楽しもうよ。だって、こうしてユウリとお祭りに参加できる時間なんて、今しかないんだからさ」
「……」
「それとも、ユウリはこういうの、好きじゃない?」
それなら無理につき合わせるのは悪いと思い、尋ねたのだが……。
「……別に嫌じゃない」
さっき私が言ったのと同じセリフで返され、思わず笑ってしまいそうになる。だが、どうやらユウリなりに笑いを取りに行ったわけではないようだ。その証拠に、私の顔色を窺うことなく目線をそらしたまま喋らない。
「な、なら他のお店も回ろうよ。まだ気になるお店がたくさんあるんだよね」
微妙な沈黙に耐えきれなくなった私は、自分から提案をした。それでも彼は、しばらく沈黙したあと、無言で小さく頷くのみ。
これってOKってことで、いいんだよね?
すると突然ユウリは私に背を向け、屋台の方へと歩き出した。
「あっ、待ってよ!」
後についていこうと思った矢先、彼は突然立ち止まり、ためらうようにこちらを振り向いた。
「……さっき言ってたことは、本当か?」
「さっきって?」
何の話かわからず、記憶の糸を辿っていくと、すぐに出てこない私の記憶力に呆れたのか、ユウリは小さくため息をついた。
「……なんでもない。行くぞ」
そう言うとユウリは、いつものように目的地もいわずにさっさと行く……と思いきや、彼は歩き出す前に私に手を差し伸べてきた。
普段ならこちらのことなど気にせず行ってしまうのだが、今日に限ってはなんだかいつもと違う。きっと私に気を遣っているのだろう。
そんな普段と違う姿のユウリと接することがなんだか嬉しくて、私は彼の気が変わらないうちにその手を取ったのだった。
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